ビザジャーナル

2025-07-03

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」令和7年度改訂版が公開されました


2025年6月に公開された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和7年度改訂)」では、日本における外国人制度の適正化を目的として、複数の在留資格制度のロードマップなどについて大幅な見直しが行われました。

今回は特に注目すべき以下の3点に焦点を当て、制度の変化とその背景を解説します。

  • 技能実習制度に関する審査の厳格化
  • 永住・難民申請に関する透明性と審査強化
  • 社会保険制度の加入・納付義務に関する厳格な対応

技能実習制度の審査の厳格化

依然として不正行為や実習生の失踪が相次ぐ技能実習制度。今回の改訂では、以下のような強力な措置が取り組むべき施策として挙げられています。

実習実施者への実地検査強化
  • 実習実施者・監理団体に対する抜き打ち検査・監督体制を強化
  • 労働関係法令違反(賃金不払等)が発覚した場合、認定取り消し・行政処分を迅速に実施。
失踪防止と転籍制度の適正化
  • 失踪率が高い送出機関からの新規受入れ停止
  • 妊娠・出産を理由に退職を強いられるような人権侵害への是正措置も周知強化。
宿泊環境や報酬の適正化
  • 個室の提供など生活環境が良好な受入先に対する加点制度の導入。
  • 報酬は銀行口座への振込など「見える化」された支払いが義務化されつつある。

永住・難民審査の透明性向上と厳格化

「永住者」の在留資格取得に関しても、審査の基準の数値化および要件の厳格化が提案されています。

収入要件の明確化
  • 「独立生計要件」と「国益要件」について、収入額の目安を明文化
  • 一定額以上の安定収入がなければ永住申請は認められない方向へ。
公租公課の未納はNG
  • 故意に税金や社会保険料を納付していない場合、永住許可が拒否される明確なルールの導入。
難民認定の審査期間短縮と申請濫用対策
  • 難民認定審査は原則6か月以内の処理を目指す
  • 就労目的の濫用申請には厳格な対応を取ることで、真に保護が必要な難民の迅速支援につなげる狙いがあります。

保険加入と納付の厳格化:不加入・滞納者への審査制限

在留外国人に対する社会保険・税の加入と納付の義務のより厳しい管理が提案されています。

社会保険未加入企業の受け入れ制限
  • 特定技能外国人を受け入れる際、企業の社会保険加入状況を審査対象とする
  • 滞納実績のある企業は新たな外国人雇用が認められないようにする。
保険料未納者の在留更新不可
  • 外国人本人が保険料・税を一定額以上滞納していると、更新や変更が不許可となる可能性を示唆。
  • 在留審査と納付情報は関係省庁間でマイナンバーを活用し連携強化
医療費不払い対策の強化
  • 過去に医療費を支払わなかった外国人の再来日審査を厳格化
  • 特定技能1号の企業には医療保険の加入推奨がなされ、事前対策が進められる。

まとめ

今回の改訂では、「受入れ数の拡大」よりも「制度の適正化・透明化・厳格化」に重点が置かれていることが明確です。
技能実習や永住申請、保険加入義務など、多くの制度に対して「より厳密な審査」が求められる一方で、真に受入れるべき人材や難民が適切に支援される方向へとシフトしていくことになるのではないでしょうか。