ビザジャーナル

2025-08-07

外国人労働者の労働災害増加に備える──人事担当者が押さえるべきポイント


昨今、製造業をはじめとする各業種で外国人労働者の活用が進む一方、彼らによる労働災害件数は増加傾向にあります。
たとえば、母国語や文化の違いから労働安全衛生教育が十分に行き届かず、重大事故や休業4日以上の災害が後を絶ちません。このままでは企業の生産性低下だけでなく、法的リスクや社会的信頼の喪失にもつながりかねません。そこで、人事部門として以下の5つの視点で対策を講じることが不可欠です。


在留資格と雇用契約内容の確認・説明

  • 就労可能な在留資格の確認:当然ですが、労働者が合法に従事できる在留資格を正確に把握し、契約書に明記します。
  • 契約条件の理解促進:就業規則や契約書は難解な日本語になりがちです。外国人にも理解しやすい簡易日本語版や、必要に応じて英語・母語版を用意し、口頭でも丁寧に説明することが大切です。

多言語・視覚素材を活用したリスクアセスメント

  • 外国人向けリスクアセスメント:機械設備や作業手順の危険箇所を抽出する際、外国人も含めたワークショップ形式で意見を集約。専門用語を排し、イラストや動画で可視化した上で、結果を多言語マニュアルに反映させるとよいでしょう。
  • 多言語安全標識・注意喚起:厚労省推奨のイラスト+外国語テキストによる標識を現場に掲示し、直感的に危険が伝わる環境をつくりましょう。厚労省では、外国人のための安全衛生管理のページを公表しています。

母語・英語による安全教育

  • 研修の言語対応:安全衛生教育を母語や英語で受講できる体制を整備するのが望ましいです。外部派遣の通訳者や社内バイリンガル社員を活用し、分かりやすい教材を準備しましょう。
  • 現場OJTの見える化:ベテラン作業者との1対1指導では、実演を動画撮影し繰り返し確認できる仕組みを整えます。理解度テストも母語で実施し、記録を保存しましょう。

報告・連絡のハードルを下げる仕組み

  • 相談窓口の設置:人事部門に外国人専用の相談窓口を設置し、日々の困りごとや不安全事象を気軽に報告できるようにすることが望ましいです。
  • 定期面談の実施:月1回程度、上司と作業内容や健康状態を確認する面談を設け、早期にリスクを把握・対応できる体制を構築することが理想的です。

サポート体制強化

  • 労災申請の全面支援:書類作成や窓口対応を企業が率先して支援し、手続きの遅延・ミスを防止します。
  • 異文化理解研修:日本人従業員向けに、多文化共生やコミュニケーション方法の研修を行い、職場全体で助け合う風土を醸成しましょう。


外国人労働者は、全労働者の中でも比較的高い労災発生率を示しており、企業の安全衛生管理上、重点的に対策を講じるべき対象です。
とくに製造業では、機械操作や重量物の取り扱いなどリスクが高い作業も多く、人事部門には法令遵守だけでなく教育・コミュニケーション・生活支援を横断的に推進する役割が求められます。
紹介した5つのポイントを踏まえ、外部専門家や現場管理者とも連携しながら、事故ゼロを目指した取り組みをぜひご検討ください。