R6年入管法改正概要:マイナンバーカードと在留カードの一体化について

2024年(令和6年)に成立した入管法の改正により、マイナンバーカードと在留カードとが一体化されることになりました。
本記事では、その概要や背景、具体的な内容を紹介します。


1. 現状と課題

現在、日本に3か月以上滞在する外国人は「在留カード」が交付され、常時携帯する義務があります。同時に、外国人も住民登録されればマイナンバーカードの発行が可能です。

しかし、在留カードに関する手続きは地方入管(出入国在留管理局)で行われる一方で、マイナンバーカードに関する手続きは市町村窓口で行われています。これにより、例えば在留期間の更新などの際に、外国人はそれぞれの窓口に赴く必要があり、手続きの複雑さが課題となっていました。

2. マイナンバーカードと在留カードの一体化

今回の法改正により、外国人の日本での生活の利便性を向上させ、共生社会の実現を目指すため、マイナンバーカードと在留カードを一体化することとなりました。これにより、外国人は市町村窓口や地方入管での手続きを一度で済ませることができるようになります。

なお、一体化は義務ではなく、希望する場合にのみ適用されます。これにより、従来のカードを別々に所持し続けることも可能です。

3. 一体化カードの具体的な運用

特定在留カードと呼ばれる一体化されたカードは、地方入管における在留手続き(在留期間更新など)や、市町村窓口における住居地届出の際にワンストップで申請・交付が受けられるようになります。特別永住者についても、特別永住者証明書とマイナンバーカードを一体化することが可能ですが、これらの手続きは引き続き市町村窓口で行われます。

4. 券面と有効期間について

特定在留カードの券面には、即時に視認が必要な項目が記載され、その他の情報はICチップに記録されます。また、永住者の在留カードの有効期間が、マイナンバーカードと同様に変更される予定です。

5. 新しいカード発行までの手続き

改正法の施行後、外国人は在留カードの更新や住居地の変更時に、一体化された特定在留カードの交付を申請できます。これにより、手続きの簡略化が図られ、利便性が大幅に向上します。


結論

今回のR6年入管法改正により、マイナンバーカードと在留カードの一体化が進められることで、外国人の生活がより便利になることが期待されます。外国人労働者や留学生にとって、煩雑な手続きが簡略化される点が大きな利点です。共生社会の実現に向けた一歩として、外国人の日本での生活環境がさらに改善されることが期待されます。

改正法施行後の対応については、地方入管や市町村窓口での詳細な説明を確認し、適切な手続きを進めてください。


  • 入管法改正に伴う新制度に関して、最新の情報は出入国在留管理庁や市町村の窓口で確認できます。
  • 特定在留カードの詳細な発行手続きや要件に関する説明は、各自治体のホームページでも公開予定です。

この記事が、外国人の皆様にとって今後の手続きの参考となれば幸いです。

東京出入国在留管理局千葉出張所が移転します

2024年9月24日(火)9時から、東京出入国在留管理局千葉出張所が移転します。

移転元:千葉県千葉市中央区千葉港2-1 千葉中央コミュニティセンター
移転先:千葉県千葉市中央区問屋町1-35 千葉ポートサイドタワー3階

アクセスJR「千葉みなと駅」から徒歩20分
JR「千葉駅」・京成電鉄「千葉駅」から徒歩18分
千葉都市モノレール「市役所前駅」から徒歩10分

詳細は、こちらをご参照ください。

外国籍の学生をインターンシップで受け入れたい場合の留意点

Q:今年度から学生をインターンシップで受入れたいと考えています。外国籍の学生も積極的に受け入れたいのですが、何か注意することはありますか?

A:「日本の留学生を受け入れる場合」と「海外在住の学生を受け入れる場合」とで、必要な手続きが大きく異なります。さらに、インターンシップに報酬がでるか否かによっても、受け入れられる対象者と必要な手続きが変わってきます。

1.日本の留学生を受け入れる場合
(1)無報酬のインターンシップの場合
 無報酬であれば、特段の手続きは不要です。そのままインターンシップに参加いただけます。

(2)報酬を出すインターンシップの場合
ケース1:
 インターンシップに従事する時間が週28時間以内(長期休暇期間の場合は、1日8時間以内)の場合は、事前に地方出入国在留管理局で「包括的資格外活動許可」を受ける必要があります。なお、既にこの資格外活動許可をお持ちの留学生をインターンシップに従事させる場合には、特段の手続きは不要です。
※包括的資格外活動許可とは、いわゆるアルバイトに対する資格外活動許可のことです。アルバイト先を限定せずの従事が可能です(但し、風俗営業等に関する活動はNG)。

ケース2:
 長期休暇期間以外で、インターンシップに従事する時間が週28時間を超える場合、事前に地方出入国在留管理局で「個別的資格外活動許可」を受ける必要があります。なお、包括的資格外活動許可を既にお持ちの留学生であっても、これとは別に個別的資格外活動許可を受ける必要があります
※個別的資格外活動許可とは、従事先、従事内容に合わせて個別に認められる資格外活動です。

2.海外在住の留学生を受け入れる場合
(1)無報酬のインターンシップの場合
 インターンシップ期間が90日以内の場合は、在留資格「短期滞在」で来日およびインターンシップに従事いただくことになります。
 一方、インターンシップ期間が90日を超える場合は、在留資格「文化活動」で来日およびインターンシップに従事いただくことになります。「文化活動」で対象者を招聘するために必要な書類については、こちらを併せてご参照ください。

(2)報酬を伴うインターンシップの場合
①在留資格「特定活動(告示9号)」(インターンシップ)
 学業等の一環として行う(インターンシップが大学等の単位認定対象となる)インターンシップの場合、在留資格「特定活動(告示9号)」での招聘が可能です。この在留資格で対象者を招聘したい場合、大学等との契約や、大学からの推薦状等の取得が必要になります。詳しい必要な書類については、こちらを併せてご参照ください。

②在留資格「特定活動(告示12号)(サマージョブ)
 大学等の長期休暇期間中に行うインターンシップの場合、在留資格「特定活動(告示12号)」での招聘が可能です。ただし、この在留資格で対象者を招聘したい場合も、大学等との契約締結が必要になります。詳しい必要な書類については、こちらを併せてご参照ください。※単位認定の対象でなくとも大丈夫です。

③在留資格「特定活動(告示15号)」(国際文化交流)
 大学等の長期休暇期間中に行うインターンシップであって、国際文化交流(日本の地方公共団体が実施する国際文化交流事業に参加し、日本の小中学校等において国際文化交流に係る講義を行う活動)を行う場合には、在留資格「特定活動(告示15号)」での招聘が可能です。この在留資格で対象者を招聘したい場合は、対象者と受け入れ機関との間で契約を締結する必要があります。詳しい必要な書類については、こちらを併せてご参照ください。
※単位認定の対象でなくとも大丈夫です。

報酬を伴うインターンシップの場合は、所定の要件を満たさないと、日本に招聘することができません。これらが実現が可能かどうかを事前にしっかりとご確認ください。

育成就労制度・特定技能制度Q&Aが公表されました

出入国在留管理庁のウェブサイトに「育成就労制度・特定技能制度Q&A」が掲載されました。本記事は、Q&Aの概要を紹介します。

Q1: 法改正の目的

今回の法改正は、技能実習制度の問題点を解決し、外国人がキャリアアップしながら長期にわたり日本で働けるようにするため、育成就労制度を創設したものです。

Q2: 制度の施行時期

育成就労制度と特定技能制度の改正は、改正法の公布日(令和6年6月21日)から3年以内に施行されることになりますが、具体的な施行日は未定です。

Q3: 主務省令の公表時期

育成就労制度に関する主務省令の公表時期は未定ですが、制度利用者が円滑に利用できるように準備が進められています。

Q4: 現行技能実習生の継続受け入れ

育成就労産業分野として設定されている分野であれば、育成就労制度に移行しても受け入れは継続可能です。
施行日に日本に在留する技能実習生については、一定の範囲内で引き続き技能実習を行うことができます。

Q5: 受け入れ形態の変更

育成就労制度では、技能実習制度と同様に、単独型と監理型の受け入れ形態がありますが、受け入れられる外国人の範囲に違いがあります。

Q6: 外国子会社からの受け入れ

外国の支店や子会社の社員の短期間の受け入れは「企業内転勤2号」で、長期的な人材育成は「単独型育成就労」で受け入れが可能です。

Q7: 技能実習生の受け入れ期限

改正法施行日までに認定された技能実習計画に基づくものであり、原則として施行日から起算して3か月を経過するまでに技能実習を開始するものであれば受入可能です。

Q8: 育成就労制度の特徴

育成就労制度は、日本の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的としており、技能実習制度とは異なります。

Q9: 特定技能制度との違い

特定技能制度は即戦力となる人材を対象としているのに対し、育成就労制度は専門性がない外国人を受け入れて育成する制度です。

Q10: 育成就労制度の就労期間

育成就労制度では、原則3年間の就労を通じて人材育成が行われますが、特定技能1号への移行に失敗した場合、最長1年の在留継続が認められることがあります。

Q11: 育成就労産業分野の決定時期

育成就労制度の受け入れ対象分野は、施行日までに決定される予定であり、その手続きは所管省庁が検討中です。

Q12: 外国人受け入れ対象国

育成就労制度では、二国間取決めを結んだ国からのみ外国人を受け入れることが想定されています。

Q13: 手続きの基本的な流れ

育成就労制度の認定手続きは技能実習制度と似ていますが、育成就労制度では当初から3年間の計画を作成する必要があります。

Q14: 複数分野での就労

育成就労制度では、一貫性を保つために、複数の分野をまたいで働くことはできません。

Q15: 派遣形態での就労

派遣元と派遣先が共同で育成就労計画を作成し、その認定を受けることで、派遣の形態で育成就労を実施することができます。

Q16: 監理支援機関の役割

育成就労制度では、監理支援機関が外国人の支援・保護を強化し、転籍希望者の調整役を担うことになります。

Q17: 監理支援機関の許可申請

育成就労制度の施行前に、監理支援機関の許可申請が受け付けられる予定ですが、具体的な開始日は未定です。

Q18: 監理団体の役割の継続

監理団体は、新たに監理支援機関の許可を受ける必要がありますが、許可を受ければ役割を継続できます。

Q19: 優良要件の維持

育成就労制度では、優良な監理支援機関に対して手続きの簡素化などの優遇措置が設けられる予定です。

Q20: 施行日後の技能実習生受け入れ

施行日後も技能実習生の受け入れを継続する場合、監理団体の許可の更新が必要です。ただし、育成就労制度の監理支援機関の許可を受けている場合には、技能実習制度における一般監理事業に係る許可を受けたものとみなされますので、別途監理団体の許可の有効期間を更新する必要はありません。

Q21: 受入れ機関の優良要件

育成就労制度でも、受入れ機関に対して手続きの簡素化などの優遇措置が設けられる予定です。

Q22: 受入れ機関の要件

育成就労制度では、技能実習制度と同様の要件が適用されますが、特定技能制度との連続性を持たせるための新たな要件も設けられます。

Q23: 転籍要件

育成就労制度では、人権侵害があった場合や、一定の条件を満たせば、本人の意向による転籍が認められます。

Q24: 家族の帯同

育成就労制度では、原則として家族の帯同は認められていません。

Q25: 入国時の要件

入国時には、技能に関する要件はないものの、日本語能力試験N5相当以上の日本語能力が求められます。

Q26: 元技能実習生の再来日

過去に技能実習を行った外国人が再度来日して育成就労制度で働くことは原則的にできませんが、特定の条件を満たす場合は可能です。

Q27: 既存の技能実習生の扱い

施行日までに既に来日している技能実習生は、引き続き技能実習を継続することが可能です。

Q28: 特定技能制度の変更点

改正法により、特定技能1号の支援業務は登録支援機関に限定され、支援義務が厳格化されました。

Q29: 支援業務の委託先変更

改正法施行後は、特定技能1号の支援業務を登録支援機関に委託する必要があります。経過措置として、施行時に既存の支援委託は一時的に継続可能です。

Q30: 特定技能1号への移行要件

育成就労から特定技能1号へ移行する際は、技能や日本語能力試験に合格する必要があります。

Q31: 育成就労からの特定技能1号への移行

育成就労制度の途中で特定技能1号に移行するには、技能や日本語能力試験に合格し、一定の就労期間を満たす必要があります。

在留資格「家族滞在」から日本で就職希望の高校卒業生向け: 定住者と特定活動の在留資格ルートとは?

Q: 来年春に高校を卒業する外国人です。今は家族と一緒に日本に滞在しています。
現在保有している在留資格は「家族滞在」で、高校卒業後は日本の企業に就職したいと考えています。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の許可を得るためには、大学を卒業している必要があると聞きましたが、私も大学を卒業しないと日本で働くことはできないのでしょうか?

A: 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには、通常、大学卒業以上の学歴が必要とされています。しかし、在留資格「家族滞在」で来日・滞在している外国籍の方は、所定の要件を満たせば、大学を卒業していなくても日本で働くことができます。

1.「家族滞在」から「定住者」への在留資格変更:

  • 高校を卒業しており、さらに次の条件を満たす場合、「定住者」の在留資格に変更できる可能性があります。
    • 日本で出生した、または小学生までに来日した。
    • 日本で義務教育(小学校・中学校)を修了している。
    • 日本の高校を卒業している、または高校卒業見込みである。
    • 入国後、引き続き「家族滞在」の在留資格で日本に在留している。
    • 就職先が決定している。
    • 住居地の届出等、公的義務を履行している。

2.「特定活動」への在留資格変更:

  • また、「特定活動」の在留資格に変更することも可能です。この資格も就労が可能で、以下の条件を満たす必要があります。
    • 日本の高校を卒業している、または高校卒業見込みである。
      ※編入者の場合、日本語能力試験N2程度の日本語能力を有していることが必要。
    • 扶養者が身元保証人として日本に在留している。
    • 入国後、引き続き「家族滞在」の在留資格で日本に在留している。
    • 入国時に18歳未満であった。
    • 就職先が決定している。
    • 住居地の届出等、公的義務を履行している。

また、「特定活動」への変更後、5年以上継続して日本に滞在している方は、所定の要件を満たしていれば、「特定活動」から「定住者」に在留資格を変更できます。ただし、申請人自身に独立生計維持能力が認められることが必要です。

(出典:出入国在留管理庁ウェブサイト https://www.moj.go.jp/isa/content/930003573.pdf

このように、大学を卒業していなくても、条件を満たせば「定住者」や「特定活動」の在留資格に変更することで、日本で働くことが可能です。まずは、ご自身の状況に合った在留資格の変更を検討し、必要な手続きを進めてください。

新株予約権が「経営・管理」の資本金基準(500万円)に含まれるようになりました

外国人が日本で会社を設立し、「経営・管理」の在留資格を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

在留資格「経営・管理」の取得要件

  1. 独立した事業所の確保
    • 日本国内に独立した事務所を確保することが必要です。バーチャルオフィスや自宅のアパート・マンションなどは基本的に認められません。
  2. 500万円以上の出資金または常勤雇用2名以上
    • 資本金または出資金の総額が500万円以上であること、または、日本に居住する常勤職員(日本人、身分系の在留資格保有者)を2名以上雇用すること。
  3. 事業の適正性・安定性・継続性の証明
    • 設立する会社の事業が適正であり、安定して継続できることを示す必要があります。これには、事業計画書や収支見込みなどの書類を提出します。

新株予約権による資金調達の適用

2024年3月から、新株予約権により調達した資金も、上記「500万円以上の資本金・出資金」に含まれるようになりました。

新株予約権とは?

新株予約権は、投資家が将来的に企業の株式を保有する権利を有償で購入するものです。特にスタートアップ企業で利用されることが多く、株式を直接発行することなく資金を調達する手法として知られています。

ただし、新株予約権を「500万円以上の資本金・出資金」に含めるためには、以下の要件を満たす必要があります。

具体的な適用条件
  1. 返済義務のない払込金であること
    • 新株予約権の発行によって得られた資金が返済義務のないものであること。
  2. 将来の資本金計上の確約
    • 新株予約権が権利行使される場合、権利行使されずに失効して利益となる場合、いずれの場合でも資本金として計上されることが確約されていること。

この変更により、外国人起業家は、より柔軟に資金調達を行うことができるようになり、在留資格「経営・管理」を取得しやすくなりました。

まとめ

要件が緩和されたものの、在留資格「経営・管理」を取得するためには多くの書類を入管庁に提出する必要があり、また、複雑な要件を理解する必要があります。スムーズに在留資格を取得するためにも、ぜひ、当社にご相談ください。

【東京都】外国人介護従事者受入れに係る受入れ調整機関活用経費補助金【10月受け付け開始】

東京都は、都内に所在する介護施設等が外国人を円滑に受入れられるよう、受入れ調整機関に支払う委託料(※人材紹介に係る部分に限る)の一部を助成します。

受入れ調整機関活用経費補助金は、介護施設等が外国人介護従事者を雇用する際に、登録支援機関や職業紹介事業者等の「受入れ調整機関」に支払う人材紹介料の一部を補助する制度です。この補助金は、予算の範囲内で支給されます。

主なポイント

  • 対象:特定技能外国人又は留学生を雇用する介護施設等
  • 補助内容:受入れ調整機関に支払う人材紹介料の一部
  • 目的:外国人介護従事者の円滑な受入れを支援

交付申請は、2024年10月より開始予定です。
詳細は以下のPDF資料をご参照ください。

令和6年度外国人介護従事者の受入れに係る受入れ調整機関活用経費補助金交付要綱

改正入管法概要(育成就労以外)

2024年6月に可決成立した改正入管法のうち、育成就労以外のポイントは、以下の通りです。

1.特定技能の適正化

  • 特定技能所属機関の支援の外部委託制限
    特定技能所属機関(受入れ機関)が1号特定技能外国人の支援を外部委託する場合、その委託先を登録支援機関に限定します。これにより、支援の質を一定水準に保ち、外国人労働者の適切なサポートを確保します。

2. 永住許可制度の適正化

  • 要件の明確化
    永住許可の要件を一層明確化し、具体的な基準を示します。例として、犯罪歴や社会保障の未納がないこと、安定した収入があることなどが挙げられます。
  • 取消事由の追加
    永住許可を受けた後に基準を満たさなくなった場合の取消事由を追加します。ただし、特段の事情がない限り、在留資格を変更し引き続き在留を許可するため、外国人が突然の退去を余儀なくされることを防ぎます。

3. 不法就労助長罪の厳罰化

  • 罰則の引き上げ
    外国人に不法就労活動をさせるなどの不法就労助長罪の罰則を引き上げました。
    以前は拘禁刑3年以下または罰金300万円以下でしたが、新たに拘禁刑5年以下または罰金500万円以下となり、両方の併科も可能です。これにより、不法就労の防止を強化し、適正な労働環境の維持を図ります。

4.企業内転勤2号の創設

  • 一定基準に適合する企業の外国事業所の職員が技能等を修得するための「企業内転勤2号」の在留資格を創設します。

これらの改正点により、日本の外国人労働者受け入れ制度はより透明で公正なものとなり、外国人労働者の権利保護と適正な労働環境の確保が強化されます。また、企業側にとっても明確な基準が示されることで、適正な労働者の確保がしやすくなります。

宿泊・ホテル業で外国人材を採用する際の留意点

近年、宿泊・ホテル業界では、外国人材の採用が増加しています。外国人材の雇用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを理解し、適切に対応することが求められます。

本記事では、宿泊・ホテル業界に特に関連のある在留資格「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の違い、各業務に従事できる内容について解説します。

1.在留資格「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の違い

(1)特定技能
「特定技能」は、2019年4月に設けられた新たな在留資格です。特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。いずれも特定の産業分野で働くことが求められます(ただし、1号よりも2号の方が、就労の認められる産業分野は狭い)。

また、特定技能1号には期間の上限が設けられている一方、特定技能2号にはこのような上限は設けられていません。

(2)技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」は、高度な専門知識や技術を有する外国人を対象とする在留資格です。例えば、エンジニア、開発者、研究者、法務、経理、営業、翻訳・通訳、貿易業務等の、専門的な知識を発揮する高度な業務を対象としています。

2.ホテル・宿泊業での従事できる業務の違い

(1)技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が宿泊業に従事する場合、以下のような業務が考えられます。

  • 国際業務:外国人観光客やビジネス客の対応、宿泊施設の国際的なマーケティングやプロモーション、外国語での接客対応やカスタマーサポートなど。特に、多言語対応が求められるフロント業務やマネージャー、国際会議のコーディネーターなどが該当します。
  • 翻訳・通訳業務:ホテルの案内資料やウェブサイトの翻訳、外国人客とスタッフとのコミュニケーションをサポートする通訳など。
  • 広告・宣伝:宿泊施設のプロモーション活動や広告戦略の立案、実施。
  • IT管理:ホテルのシステム管理、ウェブサイトの運営、オンライン予約システムの管理など。

(2)特定技能
「特定技能」の在留資格を持つ外国人が宿泊業に従事する場合、以下のような業務が考えられます。

フロント業務:チェックイン・チェックアウトの手続き

・接客業務:宿泊客への対応

・清掃業務:部屋の清掃や設備の管理

・その他の現場作業:様々な現場作業全般

「特定技能」であれば、主として現場での業務(例:フロント業務、接客業務、清掃業務)に従事することができます。つまり、現場作業を含む幅広い職務を担うことができます。一方、「技術・人文知識・国際業務」は、より専門的な業務(例:国際業務、翻訳・通訳業務、国際マーケティング、広告・宣伝、IT管理)に従事しなければならず、また、原則として現場作業には従事できません。

このように、従事させたい業務の内容により、適切な在留資格は変わります。その判断は容易ではなく、プロのアドバイスが非常に重要となります。例えば、現場業務に従事させる場合は「特定技能」が適していますが、専門知識や高度なスキルを要する業務には「技術・人文知識・国際業務」が適しています。

3.その他
技能実習制度は、日本の技術や知識を外国人労働者に習得させることを目的としていますが、近年では「技能実習」から「特定技能」への移行が促進されています。これにより、技能実習生は実習期間を終えた後も「特定技能」の在留資格を取得することで、さらに長期間日本で就労することが可能となります。

この変更は、宿泊・ホテル業界においても大きな影響を与えます。技能実習生が「特定技能」へ移行することで、現場での経験と知識を持った労働力が確保され、サービスの質向上に寄与します。

4.まとめ
宿泊・ホテル業で外国人材を採用する際には、「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」の違いを理解し、それぞれの在留資格に適した業務に従事させることが重要です。また、「技能実習」から「特定技能」への移行を活用することで、長期間にわたる安定した人材確保が可能となります。

従事させたい業務内容に基づいて適切な在留資格を選定するためには、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。これらのポイントを押さえて、外国人材の採用と育成を進めていくことが求められます。

育成就労制度の概要

新たな在留資格創設

2024年6月、改正入管法が可決され、これにより「育成就労」という新たな在留資格が創設されました。
これに伴い、現行の技能実習制度は廃止され、育成就労産業分野に属する業務に従事することが求められます。

目的

育成就労制度は、特定産業分野において特定技能1号水準の技能を持つ人材を育成し、当該分野における人材を確保することを目的としています。また、育成就労外国人の適正な保護も目的としています。

特筆すべき事項

  1. 育成就労計画の認定制度
    育成就労計画の認定には、育成就労の期間が3年以内であること、業務内容、技能、日本語能力などの目標や内容、受入れ機関の体制、外国人が送出機関に支払った費用額などが基準に適合していることが必要です。
    転籍の際には、転籍先において新たな育成就労計画の認定を受ける必要があり、やむを得ない事情や同一業務区分内であることなどの要件を満たす場合に限ります。
  2. 関係機関の在り方
    監理支援機関については、外部監査人の設置を許可要件とし、受入れ機関と密接な関係を有する役職員を当該受入れ機関に対する業務に関わらせてはならないとしています。
    外国人技能実習機構に代わり「外国人育成就労機構」を設立し、育成就労外国人の転籍支援や1号特定技能外国人に対する相談援助業務を追加します。
  3. その他
    季節性のある分野においては、派遣形態による育成就労の実施を認めます。
    制度所管省庁が地域協議会を組織し、地域の実情を踏まえた取組について協議を行います。

育成就労制度は、外国人の適正な労働環境を確保しながら、日本国内での人材育成と確保を進めるための新たな枠組みとして設計されています。この制度の施行により、日本は「選ばれる国」を目指し、長期間産業を支える人材を確保することを目指しています。