改正入管法概要(育成就労以外)

2024年6月に可決成立した改正入管法のうち、育成就労以外のポイントは、以下の通りです。

1.特定技能の適正化

  • 特定技能所属機関の支援の外部委託制限
    特定技能所属機関(受入れ機関)が1号特定技能外国人の支援を外部委託する場合、その委託先を登録支援機関に限定します。これにより、支援の質を一定水準に保ち、外国人労働者の適切なサポートを確保します。

2. 永住許可制度の適正化

  • 要件の明確化
    永住許可の要件を一層明確化し、具体的な基準を示します。例として、犯罪歴や社会保障の未納がないこと、安定した収入があることなどが挙げられます。
  • 取消事由の追加
    永住許可を受けた後に基準を満たさなくなった場合の取消事由を追加します。ただし、特段の事情がない限り、在留資格を変更し引き続き在留を許可するため、外国人が突然の退去を余儀なくされることを防ぎます。

3. 不法就労助長罪の厳罰化

  • 罰則の引き上げ
    外国人に不法就労活動をさせるなどの不法就労助長罪の罰則を引き上げました。
    以前は拘禁刑3年以下または罰金300万円以下でしたが、新たに拘禁刑5年以下または罰金500万円以下となり、両方の併科も可能です。これにより、不法就労の防止を強化し、適正な労働環境の維持を図ります。

4.企業内転勤2号の創設

  • 一定基準に適合する企業の外国事業所の職員が技能等を修得するための「企業内転勤2号」の在留資格を創設します。

これらの改正点により、日本の外国人労働者受け入れ制度はより透明で公正なものとなり、外国人労働者の権利保護と適正な労働環境の確保が強化されます。また、企業側にとっても明確な基準が示されることで、適正な労働者の確保がしやすくなります。

新たな国家戦略特別区域の指定(2024年6月4日閣議決定)

2024年6月4日、第63回国家戦略特別区域諮問会議が開催され、いくつかの新しい特区指定が決定されました。

連携“絆”特区

目的

自治体間の連携を強化し、地域課題の解決を図るための特区として指定されました。

指定区域と具体的な取組

1. 福島県・長崎県

  • 指定名: 新技術実装連携“絆”特区
  • 福島県の取組:
    • 福島ロボットテストフィールドを中心に、ドローンの先進地域としての取り組みを推進。
    • 全国初となる市街地でのドローンのオンデマンド配送の実装。
    • 水素や医療分野における課題解決のモデル地域としての活動。
  • 長崎県の取組:
    • 多数の離島を有する地域特性を活かし、ドローンの実用化を促進。
    • 福島県と連携し、市街地でのドローンのオンデマンド配送を実装。

2. 宮城県・熊本県

  • 指定名: 産業拠点形成連携“絆”特区
  • 宮城県の取組:
    • 大規模半導体工場の建設に向けた外国人材の受け入れ環境整備。
    • 関連産業に従事する外国人材の在留資格審査の迅速化および早期育成。
    • 教育、雇用分野での新たな産業拠点の形成。
  • 熊本県の取組:
    • 宮城県と同様に、半導体関連の外国人材受け入れ環境整備。
    • 外国人材の在留資格審査の迅速化および早期育成。
    • 教育、雇用分野での新たな産業拠点の形成。

金融・資産運用特区

目的

国内外の金融・資産運用業者を集積し、成長分野の発展を目指す特区として指定されました。

指定区域と具体的な取組

北海道

  • 指定名: 金融・資産運用特区
  • 具体的取組:
    • 札幌を中心に金融機能の集積を図り、北海道全域で地域のポテンシャルを活かしてGX(グリーントランスフォーメーション)産業の振興を図る。
    • 金融行政の英語対応の拡充。
    • 商業登記・社会保険などの開業手続の英語化。
    • 銀行によるGX関連事業への出資規制改革。
    • 多くの規制改革項目を含む。

既存の金融・資産運用特区

  • 指定区域: 東京、大阪、福岡
  • 具体的取組:
    • 国内外の投資資金を呼び込みながら、地域の産業や企業が発展しやすい環境を整備。
    • 金融行政の英語対応の拡充。
    • 商業登記・社会保険などの開業に伴う手続の英語化。
    • 銀行によるGX関連事業に対する出資規制改革。

まとめ

今回の諮問会議では、各地域が持つ特色や強みを活かしつつ、連携や規制改革を進めることで、地域課題の解決や新たな産業拠点の形成を目指しています。特に、福島県・長崎県のドローン活用や宮城県・熊本県の半導体関連の取組、そして北海道のGX産業の振興など、地域に根ざした具体的な計画が発表されました。今後の進展に期待が寄せられています。

以上、第63回国家戦略特別区域諮問会議における新たな特区指定区域の詳細についてご紹介しました。地域の発展と課題解決に向けたこれらの取組がどのように進展していくのか、今後も注目していきたいと思います。

会社が外国人従業者のパスポートを一括管理することはNGなのでしょうか?

Q:外国人のパスポートの有効期限の管理等も兼ねて、外国人従業者のパスポートを一括管理しています。このような取り扱いはNGなのでしょうか?

A:会社が外国人従業員のパスポートを一括管理することはできません。

まず、大原則として、入管法第23条第1項には「本邦に在留する外国人は、常に旅券(次の各号に掲げる者にあつては、当該各号に定める文書。第三項及び第七十六条第二号において同じ。)を携帯していなければならない。」旨が規定されています。つまり、日本に滞在する外国人には、パスポートの携帯義務が課されます。
ただし、同項の但し書きでは、「ただし、次項の規定により在留カードを携帯する場合は、この限りでない。」との定めがあるため、在留カードを携帯する場合には、パスポートの携帯義務は課されないことになります。

しかし、厚労省が公表している「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」内には、以下の定めが存在します。
6 金品の返還等
事業主は、外国人労働者の旅券等を保管しないようにすること。また、外国人労働者が退職する際には、労働基準法の定めるところにより当該外国人労働者の権利に属する金品を返還すること。また、返還の請求から七日以内に外国人労働者が出国する場合には、出国前に返還すること。

上記指針は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の第八条の規定に基づき定められたものですが、罰則規定はありません。しかし、罰則規定がないからと言って無視してもよい、というものでは決してありませんし、後々の従業員とのトラブルの火種ともなり得ます。

また、2024年5月24日付けで、「外国人従業者のパスポートを管理する契約は、公序良俗に違反し無効である」との判決が、横浜地裁にて下されました。また、使用者には、再発行手数料と慰謝料の合計金額22万6,000円の支払いが命じられています。

優秀な外国人材を確保し、また、長くかつ気持ちよく働いてもらうためにも、法令遵守を徹底しましょう。

「在留資格区分別にみた賃金(外国人労働者の賃金)」が公表されました

独立行政法人労働政策研究・研修機構が、「在留資格区分別にみた賃金(外国人労働者の賃金)」を公表しました。その概要は、以下の通りです。

在留資格区分別の賃金

調査結果によると、2023年の外国人労働者全体の平均賃金は23万2,600円で、平均年齢は33.0歳、平均勤続年数は3.2年です。在留資格区分別に見た場合、以下のような賃金の違いが見られます。

  1. 専門的・技術的分野(特定技能を除く)
    • 平均賃金:29万6,700円
    • 平均年齢:31.8歳
    • 平均勤続年数:3.0年
  2. 特定技能
    • 平均賃金:19万8,000円
    • 平均年齢:28.9歳
    • 平均勤続年数:2.4年
  3. 身分に基づくもの
    • 平均賃金:26万4,800円
    • 平均年齢:44.7歳
    • 平均勤続年数:5.7年
  4. 技能実習
    • 平均賃金:18万1,700円
    • 平均年齢:26.2歳
    • 平均勤続年数:1.7年
  5. その他(特定活動及び留学以外の資格外活動)
    • 平均賃金:23万1,300円
    • 平均年齢:30.8歳
    • 平均勤続年数:2.5年

産業別の賃金

次に、産業別に外国人労働者の賃金を見ていきます。調査結果は以下の通りです。

  1. 建設業
    • 平均賃金:22万6,900円
    • 平均年齢:29.3歳
    • 平均勤続年数:2.3年
  2. 製造業
    • 平均賃金:19万2,600円
    • 平均年齢:32.0歳
    • 平均勤続年数:3.2年
  3. 宿泊業,飲食サービス業
    • 平均賃金:21万6,700円
    • 平均年齢:31.9歳
    • 平均勤続年数:3.1年
  4. 生活関連サービス業,娯楽業
    • 平均賃金:19万7,200円
    • 平均年齢:39.9歳
    • 平均勤続年数:4.6年
  5. 医療,福祉
    • 平均賃金:21万6,300円
    • 平均年齢:29.7歳
    • 平均勤続年数:2.1年
  6. サービス業(他に分類されないもの)
    • 平均賃金:25万1,500円
    • 平均年齢:37.8歳
    • 平均勤続年数:2.9年

※「専門的・技術的分野(特定技能を除く)」には、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興業、技能が含まれる。


考察

これらの結果から、在留資格や産業分野によって外国人労働者の賃金に差が出ていることがわかります。
「専門的・技術的分野」には、高度専門職が含まれることから、平均賃金が最も高くなったものと思われます。
一方、「技能実習」の平均賃金は最も低く、「特定技能」も2番目に低い結果となっています。現場での人手不足が叫ばれる中、このような差の是正は、人材確保のための重要な課題の1つと言えるのではないでしょうか。
また、産業別に見ると、製造業や生活関連サービス業では比較的低賃金である一方、サービス業(他に分類されないもの)では高賃金であることが確認できます。これは、IT系業務従事者の賃金が高いことに起因するのではないかと思われます。

詳細な情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。

日本版ESTA導入か?

出入国在留管理庁は、短期滞在ビザが免除された外国人に対して、日本への渡航前に滞在先や身寄りの申告を義務付ける新システムを導入する計画であるとの報道がなされました。
この取り組みは、不法滞在やテロのリスクを抑えることを目的としており、2030年までの運用開始を目指しています。

アメリカのESTA(電子渡航認証システム)を参考にするとのことで、氏名、旅券情報、商談相手の名前、病院名、利用した旅行会社の名前等を事前登録させる仕組みを想定しているようです。

2025年度予算案でシステム構築に必要な費用を計上予定。
この新しいシステムの導入により、日本の国境セキュリティが強化されることが期待されます。

こちらも併せてご参照ください。

令和5年末現在における在留外国人数

2024年3月22日に出入国在留管理庁が発表した内容によると、令和5年末の在留外国人数は、341万992人(前年末比33万5,779人、10.9%増)で、過去最高を更新しました。

滞在者数上位10か国・地域は、以下の通りです。
インドネシア、ミャンマー、フィリピン等、ASEAN諸国からの在留者数が大幅に増加していることが分かります。

(1)中国821,838人(+60,275人)
(2)ベトナム565,026人(+75,714人)
(3)韓国410,156人(-  1,156人)
(4)フィリピン322,046人(+23,306人)
(5)ブラジル211,840人(+  2,410人)
(6)ネパール176,336人(+36,943人)
(7)インドネシア149,101人(+50,236人)
(8)ミャンマー86,546人(+30,307人)
(9)台湾64,663人(+  7,369人)
(10)米国63,408人(+  2,604人)

在留資格別では、「永住者」が最も多いことが分かります。
これは、在留資格「高度専門職」保有者に対する永住許可要件の緩和も影響しているものと思われます。

(1)永住者891,569人(+27,633人)
(2)技能実習404,556人(+79,616人)
(3)技術・人文知識・国際業務362,346人(+50,385人)
(4)留学340,883人(+40,245人)
(5)特別永住者281,218人(-  7,762人)

シンシアインターナショナルでは、永住許可申請のサポートも行っております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例」についての公表

令和4年中に判断された「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例」が、入管庁のウェブサイトにて公表されました。

令和4年1月1日から同年12月31日までに在留特別許可された事例のうち18件、在留特別許可されなかった事例のうち18件について、類型別にその概要が公表されています。

詳細は、こちらをご参照ください。

令和6年能登半島地震に伴う在留諸申請の取扱いについて

この度の地震で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
令和6年能登半島地震の影響により、本来の期限までに入管への手続きができない(できなかった)方への救済措置が公表されました。
概要は、以下の通りです。

1.申請受付期間について
被災を理由として、在留期間内に申請ができなかった方については、当面の間、在留期間を経過した(過ぎた)場合であっても、個別に手続を受けることができます。
近くの入管で、申請のための相談を行ってください。

2.申請先について
被災を理由として、本来の住居地から一時的に移動・避難された方については、現在の滞在先を管轄する入管で申請すること
ができます。

こちらも併せてご確認下さい。


技能実習制度の見直し案 政府提言へ

2023年11月24日(金)、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)が開催され、
・技能実習制度の発展的解消
・人材確保と育成を目的とした「育成就労制度」の創設
以上2つの提言を盛り込んだ最終案が取りまとめられました。

「育成就労制度」は、未熟練の外国人材を、特定技能1号に移行できるレベルにまで育成することを目的とするものです。
所定の要件を満たせば職場の転籍も可能であり、技能実習制度よりも柔軟な制度となることが予想されます。

詳細を知りたい方は、こちらをご参照ください。

J-Findの対象者拡大へ?

政府は、在留資格「J-find」の対象者を、海外のトップ大学卒業生から国内外のトップ大学卒業生に拡大する方針を発表しました。
日本で以下の活動を行うことができ、最長2年、日本に滞在することができます。
・就職活動
・起業準備活動
・上記活動を行うために必要な資金を補うための就労

詳細な内容は、こちらもご参照ください。

優秀な外国人が日本で長期に就労できる制度は今後更に拡充されていくものと思われます。
新たな情報を入手次第、随時まとめていく予定です。