令和6年11月、出入国在留管理庁は、「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例(2023年の実績)」を公表しました。この公表は、在留特別許可に関する判断の透明性を高めるための重要な情報提供としての役割を果たしています。
今回は、公開された事例をもとに、在留特別許可が「認められた事例」と「認められなかった事例」の傾向について整理してみました。
在留特別許可とは?
在留特別許可は、日本に不法滞在する外国人が一定の条件を満たした場合に法務大臣の裁量で与えられる特例措置です。
この許可は、家族の状況、人道的配慮、生活基盤などを総合的に判断して下されます。
許可された事例の傾向
在留特別許可が認められるには、以下のような要因が重要視されているように見受けられます。
1. 家族との関係
- 日本人の配偶者や実子がいる場合が多く見られます。
- 例: 日本人の配偶者との間に未成年の子どもがいるケース。
- 家族と同居し、子どもを養育している場合も考慮されます。
2. 生活基盤が日本にある場合
- 長期間日本で生活しており、帰国後の生活が困難と判断されるケース。
- 例: 約26年間日本に在留し、配偶者や子どもと生活基盤を築いているケース。
3. 健康や人道的配慮が必要な場合
- 子どもの病気や特別なケアが必要な場合。
- 例: 未成年の子どもが重い疾病を抱えている場合、特別な配慮がなされる傾向にあります。
4. 違反内容が比較的軽微な場合
- 違反期間が短く、本人が自発的に出頭申告したケースが多い。
- 例: 不法残留が1年未満であったケース。
許可されなかった事例の傾向
一方、在留特別許可が認められなかった事例には、次のような特徴が見られます。
1. 重大な法令違反や再犯
- 薬物違反や売春周旋などの刑法違反がある場合。
- 例: 覚醒剤取締法違反で懲役刑を受けたケース。
- 再犯や複数の前科がある場合。
- 例: 過去に在留特別許可を受けたが、再度の違反を行ったケース。
2. 在留希望理由が不十分
- 生活基盤や家族関係が希薄な場合。
- 例: 日本人の恋人がいるという理由だけでは認められないケース。
3. 婚姻や同居の実態がない
- 日本人の配偶者がいても、形式的な婚姻関係と判断された場合。
- 例: 配偶者との同居実態がなく、生活基盤が確認できなかったケース。
4. 虚偽の申請や文書偽造
- 偽造書類の使用や虚偽申請が発覚した場合。
- 例: 在留カードを偽造したケース。
終わりに
上述のように、許可が認められるかどうかは、単に法律違反の有無だけでなく、家族関係や生活基盤、人道的配慮など、多岐にわたる要因を踏まえて総合的に判断されます。
ただし、在留特別許可は、あくまで非常に例外的な措置であり、適法に日本に滞在することが大前提です。
また、適切な在留資格を保有しない外国人を雇用してしまうと、雇用した側にも重いペナルティが課されます。
外国人を雇用されている、または雇用を検討されている企業様に置かれましては、適切な雇用・管理が肝要であることを十分にご理解ください。
関連リンク
- 出入国在留管理庁公式サイト: 出入国在留管理庁
- 公表されたPDF資料: 在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について(令和5年)