外国人従業員の在留資格管理の重要性

昨今、多くの企業が外国人を雇用し、多様なバックグラウンドを持つ人材が企業活動に貢献しています。
そして、彼らの在留資格の管理は企業にとって責任ある雇用管理の重要な一環です。
2023年、大阪府寝屋川市の企業に対し、技能実習生の在留資格更新手続きに不備があったためとして損害賠償が命じられました。このケースは技能実習生に限らず、在留資格を有する他の外国人従業員にも十分に当てはまるものです。

事件概要と教訓

今回の事件では、在留資格の更新手続きが不十分であったために、ベトナム人技能実習生が資格を失い、結果として職場を離れることを余儀なくされました。
このような問題は、技能実習生のみならず、専門的・技術的分野で働く外国人やその他の在留資格を持つ外国人従業員にも起こり得ることです。
在留資格の更新が滞ることで、本人はもちろん、企業側も法的責任を問われるリスクがあるため、在留資格管理の重要性が改めて浮き彫りになっています。

在留資格管理の重要性が技能実習生以外にも当てはまる理由

  1. 外国人の多様な在留資格と更新要件
    日本で働く外国人には、技能実習生のほか、「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「特定技能」などの在留資格があります。各資格に応じて定められた更新手続きや期限が異なり、企業はこれらを理解し、適切に対応する必要があります。
  2. 在留期限を徒過した場合の影響
    在留資格が失効すると、外国人従業員は就労が不可能になり、最悪の場合は帰国を余儀なくされます。これは技能実習生に限らず、その他の外国人従業員にとっても深刻な問題です。また、従業員が急に退職することで、企業の業務運営にも支障が生じる可能性があります。
  3. 法令遵守と企業イメージの向上
    外国人従業員を雇用する企業は、雇用管理上、在留資格の管理を徹底する責任があります。適切な管理は、企業としての社会的責任を果たすことにもつながり、健全な雇用環境を提供しているという企業イメージの向上にも寄与します。
  4. 管理不備による企業リスクの軽減
    在留資格管理が不十分であった場合、労働契約が守られなかったとして企業が損害賠償を求められることもあります。
    今回のケースでも、在留期限更新手続きの不備によって賠償命令が下されています。企業側が在留期限の更新状況を把握し、適切に管理することで、リスクを未然に防ぐことが可能です。

専門家への依頼による管理ミスの防止

外国人の在留資格の管理は、期限や書類の整備などが複雑であり、更新手続きのミスが発生しやすいものです。
そのため、特に多忙な企業の人事担当者にとって、行政書士などの専門家に業務を依頼することは有効な対策です。
行政書士は在留資格に関する知識と経験を持ち、以下の点で企業のリスクを軽減することができます。

ご不明な点は、ぜひ、弊社までお気軽にお問い合わせください。

本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置について(要件の一部変更)

ミャンマー人に対する緊急避難措置の背景と対応

2021年2月1日のミャンマー軍事クーデターを原因とするミャンマー国内の情勢混乱を理由に、日本政府は、日本に滞在するミャンマー人に対する緊急避難措置を導入しました。
この措置により、現在保有する在留資格の活動が終了したものの引き続き日本滞在を希望するミャンマー人に対しては、ミャンマーの情勢が安定するまでの間に限り、他の在留資格への変更(特定活動)や就労の許可が認められています。
しかし、制度の誤用・濫用が散見されることから、2024年10月1日より、この措置に関する取り扱いが一部変更されました。

現在有する在留資格の活動を満了した者、または自己都合ではなく在留資格の活動を満了せずに滞在を希望する者

これまでの取り扱い
  • 特定活動(1年・就労可) への変更が原則として認められていました。
    • 例えば、技能実習を修了した場合や、教育機関を卒業した場合、または自己都合ではない理由(会社の都合や不測の事態で実習が継続できない場合など)で実習が完了しなかった場合でも、特定活動への変更が許可されました。
今後の取り扱い
  • 特定活動(1年・就労可) への変更は一部制限が設けられます。
    • 技能実習を修了していない場合でも、実習の継続が不可能となった理由が自己の責任ではないと判断され、かつ監理団体が実習先の変更に必要な措置を講じたものの新たな実習先が見つからない場合に限り、特定活動(1年・就労可)への変更が認められます。
    • ただし、自己都合で実習を中断した場合(以下②参照)や、新たな実習先が確保されている場合には、原則として特定活動への変更は認められません。

自己都合で在留資格の活動を満了せずに滞在を希望する者

これまでの取り扱い
  • 特定活動(6か月・週28時間以内の就労可) への変更が許可されました。
    • 自己都合で在留資格の活動(例:技能実習など)を満了せずに日本での滞在を希望する場合、特定活動(6か月・週28時間以内の就労可)の資格に変更できました。
    • この特定活動資格を1年間、違反なく適正に保持していれば、特定活動(1年・就労可) への変更が認められる場合もありました。
今後の取り扱い
  • 原則、特定活動(6か月・週28時間以内の就労可) への変更が引き続き認められます。
    • この資格を1年間、違反なく保持している場合、特定活動(1年・就労可)への変更が認められる可能性があります。
    • ただし、技能実習を修了しておらず、なおかつ在留期間が残っている者については、特定活動への変更は認められません

参考

出入国在留管理庁ウェブサイトより(URL:https://www.moj.go.jp/isa/content/001349360.pdf)

工学部を卒業した外国人を自動車整備士として雇用することは可能か?

Q:当社は自動車整備事業を営んでおり、近年の人手不足を受けて外国人労働者の採用を検討しています。
工学部を卒業した外国人を自動車整備士として雇用することはできるのでしょうか?できるとすれば、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか?

A:

1. 「技術・人文知識・国際業務」在留資格で自動車整備士を雇用できる可能性

技術・人文知識・国際業務」という在留資格は、専門的な知識を活かすことのできる業務を対象とするものです。一方、自動車整備業務は現場作業を伴うため、原則、このような業務には従事できません。しかし、特定の条件を満たす場合には、自動車整備士の業務をこの在留資格で行える可能性があります。

2. 「技術・人文知識・国際業務」在留資格で許可される業務の条件

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で自動車整備士として働く場合、以下の条件を満たす必要があります。

  • 従事する業務が「サービスエンジニアとしてエンジンやブレーキ等の点検・整備・分解等の業務に従事するとともに、自動車検査員としての業務に従事する」ようなものであること。
  • 2級自動車整備士資格を有していること。なお、入国管理局は、2級自動車整備士資格を明確な要件として掲げてはいませんが、上記業務に従事するためにはこの資格が必要であるため、必然的に2級自動車整備士資格を取得していることが前提となります。
  • 一方、2級自動車整備士資格を取得するためには、3級自動車整備士資格取得後に3年以上の(自動車整備士としての)実務経験を有しているか、日本国内の専門学校の自動車整備科を卒業していることが求められます。しかし、3級自動車整備士が従事できる業務は、オイルタイヤの交換といった簡単な点検業務などに限られる=「技術・人文知識・国際業務」の対象外となるため、実質的には更に日本国内の専門学校の自動車整備科を卒業していることが必須となってしまいます。

3. 他の選択肢としての在留資格

もし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の要件を満たさない場合や、2級自動車整備士資格を持たない場合は、「特定技能」や「技能実習」といった他の在留資格を検討する必要があります。これらの在留資格は、自動車整備士としての現場作業に従事することを明確に許可しており、特に2級資格がない外国人にも道を開く可能性があります。

4. 他の選択肢としての業務

一方、以下は専門的な知識を活かすことのできる業務に該当するため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で従事することが可能です。

  • 技術サポート:自動車の設計や技術的な支援を行う業務。
  • 品質管理:整備の品質を管理する業務。
  • エンジニアリング:自動車の新技術開発や部品の設計に関わる業務。

まとめ

工学部を卒業した外国人を自動車整備士として現場作業に従事させたい場合2級自動車整備士資格の取得が必要となります。入国管理局はこの資格を明確な要件とはしていないものの、エンジンやブレーキの整備・分解業務に従事するためには必須の資格です。したがって、「技術・人文知識・国際業務」在留資格で自動車整備士として働くためには、必然的に2級整備士資格が必要となります。

もし、これらの条件が整わない場合は、「特定技能」や「技能実習」在留資格の取得を検討するか、他の専門的な業務に従事してもらうことをお勧めします。

外国人労働者の雇用に関して具体的なケースや条件についてご不明な点があれば、ぜひ当社にご相談ください。

「訪問介護」従事可能な外国人材の対象拡大へ

厚生労働省は、2024年6月19日の審議会で、在留資格「特定技能」「技能実習」を有する外国人材と、「EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者」も、これまで認められていなかった訪問介護業務に従事できるようにする方針を決めました。早ければ、2025年度中にも従事可能となる見通しです。

詳細は、こちらの報道記事からご確認下さい。
詳しい情報が分かり次第、SMART VISAでもお知らせしていきます。

「育成就労制度」の転籍要件緩和へ?

自民党の外国人労働者等特別委員会は、技能実習の代わりとなる在留資格「育成就労」制度の創設に向けた政府方針案を了承しました。
この新制度では、職場変更(転籍)の制限期間を分野ごとに「1~2年」で設定できるようになります(現行は、3年間の転籍禁止)。
また、転籍時の日本語能力要件は「A1~A2」レベルとし、悪質なブローカーによる職業紹介は禁止されます。
政府は、今月中にこの方針を閣僚会議で決定し、関連法案を今国会に提出する予定です。

技能実習制度の見直し案 政府提言へ

2023年11月24日(金)、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)が開催され、
・技能実習制度の発展的解消
・人材確保と育成を目的とした「育成就労制度」の創設
以上2つの提言を盛り込んだ最終案が取りまとめられました。

「育成就労制度」は、未熟練の外国人材を、特定技能1号に移行できるレベルにまで育成することを目的とするものです。
所定の要件を満たせば職場の転籍も可能であり、技能実習制度よりも柔軟な制度となることが予想されます。

詳細を知りたい方は、こちらをご参照ください。

技能実習2号移行対象の拡充

2023年10月31日から、以下の職種・作業が技能実習2号移行対象に加わりました。
なお、金属熱処理業のみ、3号まで実施可能(最長5年間)です。

こちらも併せてご参照ください。

技能実習制度解消-新たな制度創設へ-

2023年10月18日に行われた「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」において、政府への最終報告書案がまとめられました。以下、その概要を説明します。

1.技能実習制度の改革
 上記報告書案では、”現行の技能実習制度の発展的な解消”と”新たな制度の創設”を提言しています。

2.新制度の創設
(1)概要
・新しい制度は、特定技能1号への移行に向けた人材育成を目的とするもの。
・在留期間は3年。期間満了後、所定の要件を満たせば、特定技能1号に移行できる。
・新たな制度による就労開始前に、日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格するか、入国直後に認定日本語教育機関等における相当の日本語講習を受講する必要がある。
※後者の場合、1年目終了までに試験に合格している必要がある。
・家族帯同は不可。

(2)受入対象分野の限定
 特定技能制度の設定対象分野(特定産業分野)内に限定。
※特定産業分野内でも、国内での就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外。

(3)従事業務の範囲
  特定技能の業務区分と同一の範囲にある業務に従事できる。

(4)人材育成・評価
・上記業務区分の中から、『修得すべき主たる技能』を定め、育成・評価を行う。
・特定技能1号に移行するためには、以下の①及び②の両方に合格しなければならない。
 ① 日本語能力A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等、ただし、当分の間は、当該試験合格に代えて、認定日本語教育機関等における相当な講習の受講をした場合も含む)
 ②技能検定等または特定技能1号評価試験
※特定技能1号への移行に必要な試験等に合格できなかった者であっても、同一の受入れ企業等で就労を継続する場合に限り、再受験に必要な範囲で最長1年の在留継続が認められる。

(5)受入れ見込数の設定
 受入れ分野ごとに受入れ見込数を設定し、これを受入れの上限数として運用する。

(6)転籍可能
  同一の受け入れ企業等での就労期間が1年を超えた場合であって、
 ①技能検定(基礎級)等に合格
 ②日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格
している場合には、本人の移行により転籍することができる。
※転籍できる範囲は、転籍前に就労していた分野と同一分野内に限られる。

(7)その他
 育成終了前に帰国した者については、新たな制度での通算在留期間が2年以下の場合に限り、異なる分野での育成を目的とした再度の入国(新たな制度による)を認める。

技能実習2号に林業職種追加へ

厚生労働省は、技能実習2号及び3号への移行対象職種に「林業職種」(育林・素材生産作業)を追加する方針であることを発表しました。
今後は、厚生労働省及び出入国在留管理庁において、省令の改正案に係るパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえて議論審査基準案や技能実習評価試験案等について議論が行われる見込みです。

シンシアインターナショナルでは、技能実習の在留資格諸申請についても対応しております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。

技能実習制度運用要領が一部改正されました

令和5年4月1日付けで、技能実習制度運用要領の一部が改正されました。ポイントは、以下の通りです。

1.技能実習計画関係
(1)「常勤職員等である旨の誓約書」を提出すれば、「技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員の常勤性が確認できる書類」の提出は原則不要となりました。
(2)技能実習計画認定申請のときに求められていた「技能実習期間中の待遇に関する重要事項説明書」の提出は、不要となりました(作成は必要です。実習実施者が保管します。)
(3)技能実習を中断した後に再開する際の手続が変更となりました。
・技能実習計画の変更認定手続により行えることとなりました(従来の新規の認定は不要)。
・ 技能実習を中断した後に再開する場合には、「中断した理由及び再開するに至った経緯等を記載した理由書(様式自由)を提出する必要があります。
・ 妊娠、出産等を理由に技能実習生が帰国することを希望した場合には、「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」を作成し、保管する必要があります。

2.監理団体許可申請関係
  監理団体許可申請において、財産的基礎に関する書類として「法人の事業に係る出入金が適正に行われているか確認できるもの」を提出しなければならなくなりました。

3.優良な実習実施者及び監理団体の基準関係
(1)「優良な実習実施者」に関する基準について、考え方が追記されました。
・ 技能実習生の実技試験の合格率の計算方法において、やむを得ない不受検者に当たらない例。
・ 技能実習生の昇給率において、直近の技能実習事業年度に対象者がいない場合の取扱い。
(2)「優良な監理団体」に関する基準について、考え方が追記されました。
・ 直近過去3年以内に適正な実習監理を行っていなかったことを理由として改善命令を受けたことがある場合、項目①Ⅰは加点対象として認められません。
・ 直近過去3年以内に技能実習生からの相談に適切に応じなかったことなどを理由として改善命令を受けたことがある場合、項目④Ⅰは加点対象として認められません。
・ 地域社会との共生に関する具体例等が追記されました。

4.監理団体の業務の実施に関するもの
(1)監査、訪問指導の頻度における起算月の考え方を記載しました。
(2)監理団体と雇用契約がない者を作成指導者として、技能実習計画の作成指導を行わせた場合、名義貸しに該当するおそれがあることを記載しました。
(3)帰国旅費の負担及び「必要な措置」に関する考え方を追記しました。
・監理団体が負担する帰国旅費には、技能実習生が出発する空港までの移動費が含まれます。
・帰国のためのPCR検査費用について、技能実習生に費用の負担が困難な事情がある場合、「必要な措置」の一環として、監理団体が負担する必要があります。
(4)技能実習生からの相談体制について、技能実習を行っている時間帯のみならず、夜間、休日にも適切に相談応需体制を整備する必要があることを追記しました。
(5) 令和5年6月以降、監理団体の業務の運営に係る規程は、原則、インターネットにより公表する必要があることを追記しました。
(6)監理費を預託させた場合の取扱いについて、預託させた金銭から監理費として精算した時点が徴収時点となり、預託額が監理費として精算(徴収)した額を上回った場合、それ以降の預託額の減額等により実習実施者に返還せずに他の用途に費消した場合には、法律で禁止されている手数料又は報酬を受けたものと見なされる場合があることを追記しました。
(7)監理事業の業務を委託する際には、委託の範囲を明確に定め、契約書等による書面での契約が望まれることを追記しました。

6.様式の変更
(1)技能実習計画認定申請に係る提出書類が変更され、一覧・確認表が更新されました。
なお、一部の書類に関しては、過去の申請又は届出時から内容に変更がない場合、当該書類を提出した日または申請番号(認定番号)を明示することで、提出を省略することができます。
(2)監理団体の許可申請の添付書類一覧表が更新されました。

詳細は、こちらをご参照ください。