日本に住む外国人が行うべき「市区町村での手続」とは?

日本で生活する外国人も市区町村に住民登録等を行う必要があり、企業の人事担当者には、外国籍社員が適切に手続きを進めるためのサポートが求められます。
本記事では、特に以下の手続きについて解説します。貴社の外国籍社員サポートの一助になれば幸いです。

転出・転入の手続き

(1)初めて日本に入国した場合

外国人が日本に新たに住居を定める場合、以下の手続きが必要です。

  1. 転入届の提出
    • 住所を定めた日から 14日以内 に、住む市区町村の窓口で住民登録を行います(※入国日から90日以内であることも必要です)。
    • 必要書類: 在留カード(交付されていない場合はパスポート)など
  2. 住民票の作成
    • 住民登録後、住民票が作成されます。これにより、住民票の写しの交付を申請できるようになります。
  3. マイナンバーの通知
    • 市区町村からマイナンバーが通知されます。詳細は後述します。

(2)引越しの場合

引越しの際の手続きは、移動先がどこかによって異なります。

  1. 市区町村間の引越し
    • 引越し前に住んでいた市区町村の役場に 転出届 を提出。
    • 引越し後 14日以内 に新居地の市区町村の役場に 転入届 を提出。
  2. 同じ市区町村内での引越し
    • 引越し後 14日以内 に住んでいる市区町村の役場に 転居届 を提出。
  3. 海外への転出
    • 出国前に、住んでいる市区町村で 転出届 を提出。

出生届

外国人にお子さんが生まれた場合、次の手続きが必要です。

  1. 届出の期限
    • 出生の日を含めて 14日以内 に、市区町村へ出生届を提出します。
  2. 必要書類
    • 出生届、出生証明書(病院から発行される)、親の在留カード、パスポート。
    • 出生に関連する国籍手続きについて大使館や領事館に確認をしてください。

3. 婚姻届

(1)日本で婚姻する場合

外国人が日本で婚姻する場合、以下の手続きが必要です。

  1. 必要書類
    • 相手が日本人の場合: 戸籍謄本
    • 相手が外国人の場合: 本国で発行された 婚姻要件具備証明書(日本語訳を添付)
  2. 本国での有効性の確認
    • 日本で成立した婚姻が本国でも有効であるかは、それぞれの大使館・領事館に確認する必要があります。

4. マイナンバー制度

マイナンバーは日本で生活する上で重要な個人番号制度です。社員の手続き支援の際に、以下を把握しておきましょう。

(1)マイナンバーの利用目的
  • 年金・医療サービスの受給
  • 税手続き
  • 銀行口座の開設
(2)マイナンバーカードの取得
  1. 住民登録などを行う際に申請書を提出するか、後日郵送される申請書を用いて、スマートフォン、パソコン、郵送、証明用写真機、または市区町村窓口に申請を行います。
  2. 申請後約1か月でカードが発行され、市区町村の窓口で受け取る必要があります。
  3. 在留期間が更新された場合、マイナンバーカードの有効期限延長手続きが必要です。

まとめ

外国籍社員が日本で快適に生活し、スムーズに業務に専念できるよう、市区町村での手続きをサポートすることは人事担当者の重要な役割です。
特に、転出・転入届、出生届、婚姻届、マイナンバー制度に関しては、事前に必要書類や手続きの流れを把握しておきましょう。

参考リンク

  • 総務省 外国人住民手続き情報: URL
  • マイナンバーカード公式サイト: URL

永住許可申請に「親族一覧表」が必要に!令和6年11月13日からの変更点について

令和6年11月13日より、永住許可申請時に提出する必要書類に「親族一覧表」が追加されました。

親族一覧表とは?

「親族一覧表」とは、申請者の在日・在外親族両方の情報を記載した一覧表です。主に以下の情報を記載します。

  • 家族の名前
  • 続柄(父、母、配偶者、子など)
  • 生年月日
  • 国籍
  • 電話番号
  • 現住所

この表は、申請者の家族関係や生活状況をより正確に把握するために求められています。

なぜ変更が行われたのか?

永住許可申請の審査プロセスをさらに公正かつ透明にすることを目的とするものと思われます。
親族一覧表を提出させることで、申請者の家庭環境や家族との関係をより明確にし、審査を効率化することが狙いです。

申請に必要な主な書類

この変更により、令和6年11月13日以降、永住許可申請には以下の書類が必要となります。

  1. 永住許可申請書
  2. 申請人の写真(3か月以内に撮影されたもの)
  3. 申請人のパスポートおよび在留カード
  4. 身分関連を証明する書類(配偶者の戸籍謄本など)
  5. 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
  6. 申請人又は申請人を扶養する者の職業を証明する書類
  7. 税関連の証明書(所得証明書、納税証明書など)
  8. 年金及び医療保険の支払い状況を証明する書類
  9. 身元保証人に関する書類
  10. 了解書
  11. 親族一覧表(新規追加)

詳細は、出入国在留管理庁の公式ホームページをご覧ください。

親族一覧表の作成方法

出入国在留管理庁のウェブサイトでは、親族一覧表のフォーマットが提供されています。必要事項を正確に記入し、書類の漏れがないように準備してください(親族一覧表の詳細はこちら)。

まとめ

令和6年11月13日以降、永住許可申請の準備には「親族一覧表」の提出が必要となりました。
引き続き、法務省や出入国在留管理庁の公式情報を確認し、正確な書類を揃えることが大切です。不明点があればぜひ弊社までご相談ください。

外国人社員の年金制度が変わる!?「脱退一時金」見直しを検討か?

日本に滞在する外国人労働者が増える中で、公的年金の「脱退一時金」制度が再び注目されています。
厚生労働省は現在、脱退一時金の受給条件や算定方法を見直す検討を進めています。
本記事では、脱退一時金制度の概要と現行の課題、さらに見直しの方向性について解説します。

脱退一時金とは?

脱退一時金は、日本の公的年金制度(国民年金や厚生年金)に加入していた外国人が、日本を離れて帰国する際に受け取れる制度です。

  • 対象者
    日本での年金加入期間が6か月以上あり、受給資格期間(10年)を満たさずに帰国する外国人。
  • 請求条件
    出国後2年以内に請求すること。
  • 金額
    加入期間や納付した保険料の額に基づいて算定。

この制度は、「受給資格期間を満たさないまま日本を出国する外国人が年金を受け取れない」という不公平を解消するために設けられました。

現行制度の問題点

現在の制度には、いくつかの課題があります。

1.再入国者の不利益
再入国許可を得て一時帰国する外国人も、脱退一時金を受け取ることが可能です。
しかし、一度受け取るとそれまでの保険料納付期間がリセットされるため、再び日本で働き始めても10年の受給資格期間に満たなくなる場合があります。なお、 2022年度には脱退一時金を受給した外国人の4人に1人が再入国許可を得ていたとのデータがあり、これは喫緊の課題となっています。

2.年金財政への影響
外国人労働者は日本の年金制度を支える重要な存在ですが、短期滞在者が増えることで、保険料納付が中断しやすくなっています。脱退一時金の支給が増えることで、年金財政の長期的な安定性が揺らぐ可能性があります。

3.払い損の懸念
受給資格期間を満たさない外国人にとって、年金保険料が「払い損」になるとの指摘もあります。

厚生労働省による見直しの可能性

厚生労働省はこれらの課題に対処するため、再入国許可を得て出国する場合の脱退一時金の請求条件を厳格化し、保険料納付期間のリセットを防ぐなど、脱退一時金の受給条件の変更を検討しているようです。
このような変更により、外国人が将来年金を受け取りやすくすることを目指しています。

企業人事担当者への影響と対応策

1.外国人社員への情報提供
外国人社員が帰国を決断する際には、脱退一時金制度の仕組みや、再入国した場合の影響を正しく説明することが重要です。
制度変更が正式決定した際には速やかに共有してください。

2.長期雇用のためのサポート
今回の見直しは、長期雇用を促進する方向で進められています。
外国人社員が安心して長く働けるよう、キャリア支援や福利厚生の強化を検討しましょう。

3.外国人雇用管理の見直し
人事部門として、年金手続きの管理を効率化するための仕組みを導入することも重要です。
特に、再入国時の手続きや年金加入状況の確認を円滑に行うことが大切です。

シンシアインターナショナルでは、社会保険労務士事務所(社会保険労務士事務所シンシアインターナショナル)において、外国人社員の雇用に伴う社会保険加入・給与設計に関するコンサルティング、厚生(国民)年金脱退一時金還付請求、および外国人雇用に関する顧問、コンサルティング業務をご提供しています。
ぜひお気軽にご相談ください

在留資格のない外国人雇用がもたらすリスクと企業の責任:法令遵守の重要性

昨今、日本の多くの企業が人手不足に直面し、外国人労働者の雇用に活路を見出そうとしています。
しかし、在留資格を有していない外国人を雇用することは重大な法令違反であり、企業と経営者に厳しい罰則が科されるリスクがあります。
先日、茨城県鉾田市の食品加工会社において、在留資格を持たない外国人を雇用したとして、元社長と法人に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されました。このように、在留資格確認の重要性と法令の遵守は、企業の経営者・人事担当者にとって非常に重要な事項です。
本記事では、このような事態を回避するために必要な対策について解説します。

違法雇用による罰則のリスク

在留資格のない外国人を雇用した場合、経営者、さらには企業自体にも以下のような法的責任が問われます。

  • 個人の罰則:違法雇用に関与した経営者などに対して、懲役や罰金が科される可能性があります。今回の事例では、元社長に対して懲役1年(執行猶予3年)、罰金60万円が科されました。
  • 法人の罰則:企業にも罰金が科される場合があります。今回の事例でも、会社に60万円の罰金が言い渡されています。

人事担当者および経営者の責任

「人手不足」や「外国人労働者の紹介」といった理由であっても、在留資格を確認せずに雇用を決定することは法的に許されません。
この事件の判決では、経営者が「紹介された外国人の旅券などを確認せずに雇用した」ことが問題視されました。企業は、適切な雇用管理責任を果たさなければならず、在留資格確認の怠りは法的なリスクにつながります。

在留資格確認のために必要なステップ

外国人労働者を雇用する際には、次の手順で確実に在留資格の確認を行う必要があります。

  • 在留カードの確認:雇用前に、在留カードに記載された在留資格、在留期間、就労可能な職種を確認してください。
  • パスポートの確認:在留カードと併せてパスポートも確認し、在留カードの記載内容とパスポートの記載内容とに矛盾がないか確認します。
  • 雇用予定の職務内容との適合性:外国人が就労可能な職種は在留資格によって異なります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は、特定の業務にしか従事できません。
    職務内容が在留資格と適合しているかを必ず事前に確認してください。

違法雇用による企業リスク

在留資格のない外国人の雇用は、企業に大きなリスクを与えます。

  • 社会的信用の喪失:違法雇用が発覚すれば、企業の信頼性が大きく損なわれ、取引先や顧客からの信頼も失いかねません。
  • 法的リスクの増加:罰金や懲役などの法的処分が科されることで、経営や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
  • 労働トラブルの発生:不適切な雇用管理は、労働基準法違反の指導を受けるリスクを高めるため、労働トラブルの原因にもなります。

違法雇用を防止するための具体的な対策

企業が違法雇用を未然に防ぎ、法令遵守を徹底するための対策を整備することが重要です。

  • 人事担当者への教育と研修:外国人雇用に関する法令や手続きを理解し、在留資格確認・管理を徹底できるように、社内教育や研修を実施します。
  • 外部専門家の活用:法令対応に不安がある場合は、行政書士のアドバイスを受けることが有効です。
  • 定期的な雇用監査の実施:採用手続きや在留資格の確認手順が適切に行われているかを定期的にチェックし、不備を早期に是正できる体制を構築します。

まとめ

在留資格のない外国人の雇用は、企業や経営者にとって重大な法的リスクをもたらします。
人手不足の中であっても、企業は法令を遵守し、適切な採用手続きを行う責任があります。
今回の事例を踏まえ、貴社においても改めて在留資格確認の徹底を図り、健全な労務管理体制を整えることが求められます。

外国人雇用や管理に不安を覚える場合には、ぜひ、弊社にお気軽にお問い合わせください。

外国人従業員の在留資格管理の重要性

昨今、多くの企業が外国人を雇用し、多様なバックグラウンドを持つ人材が企業活動に貢献しています。
そして、彼らの在留資格の管理は企業にとって責任ある雇用管理の重要な一環です。
2023年、大阪府寝屋川市の企業に対し、技能実習生の在留資格更新手続きに不備があったためとして損害賠償が命じられました。このケースは技能実習生に限らず、在留資格を有する他の外国人従業員にも十分に当てはまるものです。

事件概要と教訓

今回の事件では、在留資格の更新手続きが不十分であったために、ベトナム人技能実習生が資格を失い、結果として職場を離れることを余儀なくされました。
このような問題は、技能実習生のみならず、専門的・技術的分野で働く外国人やその他の在留資格を持つ外国人従業員にも起こり得ることです。
在留資格の更新が滞ることで、本人はもちろん、企業側も法的責任を問われるリスクがあるため、在留資格管理の重要性が改めて浮き彫りになっています。

在留資格管理の重要性が技能実習生以外にも当てはまる理由

  1. 外国人の多様な在留資格と更新要件
    日本で働く外国人には、技能実習生のほか、「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「特定技能」などの在留資格があります。各資格に応じて定められた更新手続きや期限が異なり、企業はこれらを理解し、適切に対応する必要があります。
  2. 在留期限を徒過した場合の影響
    在留資格が失効すると、外国人従業員は就労が不可能になり、最悪の場合は帰国を余儀なくされます。これは技能実習生に限らず、その他の外国人従業員にとっても深刻な問題です。また、従業員が急に退職することで、企業の業務運営にも支障が生じる可能性があります。
  3. 法令遵守と企業イメージの向上
    外国人従業員を雇用する企業は、雇用管理上、在留資格の管理を徹底する責任があります。適切な管理は、企業としての社会的責任を果たすことにもつながり、健全な雇用環境を提供しているという企業イメージの向上にも寄与します。
  4. 管理不備による企業リスクの軽減
    在留資格管理が不十分であった場合、労働契約が守られなかったとして企業が損害賠償を求められることもあります。
    今回のケースでも、在留期限更新手続きの不備によって賠償命令が下されています。企業側が在留期限の更新状況を把握し、適切に管理することで、リスクを未然に防ぐことが可能です。

専門家への依頼による管理ミスの防止

外国人の在留資格の管理は、期限や書類の整備などが複雑であり、更新手続きのミスが発生しやすいものです。
そのため、特に多忙な企業の人事担当者にとって、行政書士などの専門家に業務を依頼することは有効な対策です。
行政書士は在留資格に関する知識と経験を持ち、以下の点で企業のリスクを軽減することができます。

ご不明な点は、ぜひ、弊社までお気軽にお問い合わせください。

オンライン申請マニュアルのご紹介

近年、日本に在住する外国人の方も、オンラインで在留資格に関する申請を行えるようになりました。
出入国在留管理庁は、在留申請オンラインシステムの使い方をまとめたオンライン申請マニュアルをウェブサイト上で公開しています。本記事では、オンライン申請マニュアルの概要をご紹介します。

在留申請オンラインシステムの利用メリット

在留申請オンラインシステムの導入により、自宅から簡単に申請ができるようになりました。
このシステムを使えば、以下のメリットが得られます:

  • 24時間申請が可能:自宅や職場から、いつでも申請できるため、忙しい方でも安心。
  • 待ち時間の短縮:役所の窓口で長時間待つ必要がありません。

誰が利用できるのか?

このオンラインシステムは、外国人本人をはじめ、代理申請が必要な場合には代理人も利用できます。具体的には、次の方々が利用可能です。

  • 外国人本人:日本で在留している外国人ご本人が直接申請する場合。
  • 代理人:外国人本人の法定代理人やご家族が代わりに申請することも可能です。

在留申請オンラインシステムでできること

オンラインシステムでは、以下のような申請手続きを行うことができます。

  • 在留資格の更新・変更:新たな在留資格が必要な場合や、期間延長を希望する場合。
  • 再入国許可申請:一時的に日本を出国し、再入国を予定している場合。
  • 資格外活動許可申請:本来の在留資格の範囲を超えた活動を希望する場合。

申請の流れ

システムへの登録から申請までの手続きの流れは以下の通りです。

  1. 利用者登録:初回利用時には、オンラインシステムで利用者登録が必要です。
  2. ログイン:ICカードリーダーでマイナンバーカードを読み取り、ログインします。
  3. 申請内容の入力:名前や在留資格、勤務先情報などを入力します。
  4. 写真・書類のアップロード:顔写真や添付資料をオンライン上で登録します。
  5. 内容の確認と申請完了:入力内容を確認し、申請を送信します。

申請後の手続き

申請が完了すると、その旨が通知されます。
新しい在留カードは郵送で、または、希望に応じて入管窓口で受け取ることができます。

注意点:タイムアウトと接続延長

ログイン後、30分以上操作がないとタイムアウトしてしまいますが、接続延長ボタンを押すことで延長が可能です。万が一、タイムアウトした場合は、再度ログインしてください。

詳細は、こちらをご参照ください。

経団連の2024年規制改革要望:外国人雇用制度の見直しと緩和を求める

経団連が公表した2024年の規制改革要望の中でも特に「人の活躍」の項目では、外国人労働者の活用に関する規制緩和の要請が大きな割合を占めています。
特に、「特定技能」に関する在留資格制度の見直しに対する提案は、人手不足に悩む企業にとって大きな影響を与える可能性があります。ここでは、特に注目すべき規制緩和要請をいくつか紹介します。

在留資格「研修」における実務研修の緩和

日本の鉄道やインフラ技術の輸出を促進するために、経団連は在留資格「研修」における「実務研修」の要件を緩和することを求めています。
現在は、主にODA対象国からの研修生が対象となり、民間企業による実務研修は制限されています。
しかし、近年のODA卒業国や東南アジア諸国からの有償研修に対するニーズが高まっており、フランスや中国のように技術輸出を進める他国との競争に遅れを取る可能性が懸念されています。

提案内容としては、民間企業主導の実務研修を一定の条件下で認めることで、日本企業が持つ高度な技術を海外に伝え、これにより、国際社会における日本の競争力向上に寄与するというものです。

在留資格「特定技能」の清掃分野での適用拡大

在留資格「特定技能」に関しても、ビルクリーニング業務の適用範囲の拡大が提案されています。
現在、特定技能外国人が従事できるのはオフィスビルやホテルなどの「特定建築物」(建築物衛生法に基づくもの)の清掃業務に限られていますが、住宅における清掃サービスのニーズが増加している現状を踏まえ、住宅専有部分の清掃業務にも外国人労働者を認めるよう求めています。

この改革が実現すれば、清掃業務における外国人労働者の活用範囲が拡大し、人手不足の解消と業務の効率化に貢献する可能性があります。

航空・鉄道分野における「在籍型出向」の認可

航空および鉄道分野での在籍型出向制度の認可も提案されています。
本年から、航空分野・鉄道分野も特定技能の対象産業分野となりましたが、現状では直接雇用しか認められていません。
しかし、拡大する航空需要や鉄道保守分野の深刻な人手不足に対応するため、在籍型出向制度を認めることで、技術の習得や業務の効率化を図ることができるとしています。

外国人雇用状況の届出一括申請の提案

さらに、外国人雇用状況の届出に関する負担軽減も提案されています。
現行制度では、アルバイト従業員等の雇用保険に加入しない外国人労働者を雇用する場合、雇用する事業所ごとにハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う必要がありますが、経団連はこれを本社所在地のハローワークへ一括申請できるようにすることを求めています。
この提案が採用されれば、全国に支店や店舗を持つ企業の管理コストが大幅に削減されるでしょう。

経団連の要望は、政府による規制改革の方向性に影響を与える可能性があります。
特に、中小企業や人事担当者にとって、外国人労働者の活用を促進する規制緩和は重要な課題です。今回の提案は、外国人労働者を効率的に受け入れ、企業の成長や競争力向上に資するものです。
今後の動向を注視し、自社の外国人雇用戦略を早めに見直すことが、今後のビジネス拡大において有効な手段となるでしょう。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人材の中途採用時の手続きについて

Q: 既に在留資格「技術・人文知識・国際業務」を保有する外国人材の中途採用を考えています。採用した場合、再度入国管理局に申請手続きをしなければいけないのでしょうか?必要な手続きについて教えてください。

A:既に在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人材を中途採用するのであれば、再度の在留資格申請手続きは不要ですが、外国人材本人が入国管理局に対して「所属(契約)機関に関する届出」をしなければなりません。

以下、詳しく説明します。

届け出が必要な場合

以下の場合に、所属(契約)機関の届出が必要です。
・契約した企業等が消滅した場合や名称、所在地が変更した場合
・契約が終了した場合
・新たな企業等と契約した場合
契約が終了し、新たな企業等と契約した場合(転職の場合)

届け出手続きについて

インターネットまたは郵送による届出が可能です。
インターネットでの届け出は、こちらから行うことができます。郵送で提出する場合は、在留カードの写しを同封する必要があります。
郵送先: 〒160-0004
東京都新宿区四谷1丁目6番1号四谷タワー14階
東京出入国在留管理局在留調査部門届出受付担当

届け出の期限について

「会社を辞めた」「新しい会社に入社した」等の届出事由の発生日から14日以内に提出する必要があります。
今回の場合、転職先入社から14日以内に提出する必要があります。
なお、転職前の届出はできせん。実際に転職してから届出をする必要があります。

届け出をしなかった場合の罰則

所属機関に関する届出をしなかった場合は、20万円以下の罰金の対象に、また、嘘の届出をした場合は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。また、在留諸申請で不利になる場合もあります

まとめ

外国人材を中途採用する際、基本的に新たな在留資格申請は不要ですが、入国管理庁への「所属(契約)機関に関する届出」が義務付けられています。罰則規定も設けられていますので、届出を忘れないよう、必ず外国人材本人にアナウンスしてください。

参考リンク:

スタートアップビザを活用した外国人の起業支援

日本政府は近年、スタートアップを促進するための多くの施策を実施しており、特に外国人起業家に対する支援策とした「スタートアップビザ」(外国人起業活動促進事業)の導入が注目されています。スタートアップビザは、外国人が日本で起業する際の障壁を取り除くために設けられた特例措置であり、これを利用することで、通常よりもスムーズに在留資格を得ることが可能です。以下では、スタートアップビザの具体的な内容や申請方法について説明します。

スタートアップビザとは?

スタートアップビザとは、国家戦略特区の一環として設けられた外国人の起業活動を支援するための制度です。通常、外国人が日本で起業するには「経営・管理」という在留資格が必要ですが、この資格を取得するためには、既にオフィスや資金を確保していることが条件とされています。しかし、スタートアップビザは、所定の地方自治体・民間企業が実施する起業支援を受けることで、起業準備段階で最長1年間、日本に滞在しながら事業を立ち上げることができる特例措置です(在留資格「特定活動」が付与される)。

スタートアップビザのメリット

  • 起業準備期間の確保:通常の在留資格(「経営・管理」)取得前に、日本国内でビジネスの計画や準備を進めることができます。
  • 地方自治体の支援:スタートアップビザは、所定の地方自治体・民間企業の支援を受けることを前提としているため、地域密着型のサポートを受けることが可能です。特に、各自治体は外国人起業家を支援するためのプログラムやネットワーキングの機会を提供しています。
  • 柔軟な資金要件:初期段階では、資本金や事業規模に対する要件が緩和されており、より柔軟にビジネスを始めることができます。

スタートアップビザの申請方法

スタートアップビザを取得するためには、まず所定の地方自治体・民間企業にビジネスプランを提出し、審査を通過する必要があります。審査を通過した場合、「確認証明書」が発行されるため、これをもって入国管理庁に申請を行います。

スタートアップビザを利用する際の注意点

スタートアップビザを活用する際には、いくつかの注意点があります。まず、スタートアップビザの期間は最長でも1年間であり、その後は正式な「経営・管理」の在留資格に変更する必要があります。また、地方自治体・民間企業ごとにサポート内容や審査基準が異なるため、事前にしっかりと確認することが重要です。

まとめ

日本で起業を考えている外国人にとって、スタートアップビザは大きな助けとなる制度です。このビザを利用することで、初期段階の準備を整えながら、日本でのビジネス展開をスムーズに進めることができます。留学生や若い起業家にとって、この制度は特に魅力的であり、日本での起業を後押しする重要なツールとなるでしょう。

本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置について(要件の一部変更)

ミャンマー人に対する緊急避難措置の背景と対応

2021年2月1日のミャンマー軍事クーデターを原因とするミャンマー国内の情勢混乱を理由に、日本政府は、日本に滞在するミャンマー人に対する緊急避難措置を導入しました。
この措置により、現在保有する在留資格の活動が終了したものの引き続き日本滞在を希望するミャンマー人に対しては、ミャンマーの情勢が安定するまでの間に限り、他の在留資格への変更(特定活動)や就労の許可が認められています。
しかし、制度の誤用・濫用が散見されることから、2024年10月1日より、この措置に関する取り扱いが一部変更されました。

現在有する在留資格の活動を満了した者、または自己都合ではなく在留資格の活動を満了せずに滞在を希望する者

これまでの取り扱い
  • 特定活動(1年・就労可) への変更が原則として認められていました。
    • 例えば、技能実習を修了した場合や、教育機関を卒業した場合、または自己都合ではない理由(会社の都合や不測の事態で実習が継続できない場合など)で実習が完了しなかった場合でも、特定活動への変更が許可されました。
今後の取り扱い
  • 特定活動(1年・就労可) への変更は一部制限が設けられます。
    • 技能実習を修了していない場合でも、実習の継続が不可能となった理由が自己の責任ではないと判断され、かつ監理団体が実習先の変更に必要な措置を講じたものの新たな実習先が見つからない場合に限り、特定活動(1年・就労可)への変更が認められます。
    • ただし、自己都合で実習を中断した場合(以下②参照)や、新たな実習先が確保されている場合には、原則として特定活動への変更は認められません。

自己都合で在留資格の活動を満了せずに滞在を希望する者

これまでの取り扱い
  • 特定活動(6か月・週28時間以内の就労可) への変更が許可されました。
    • 自己都合で在留資格の活動(例:技能実習など)を満了せずに日本での滞在を希望する場合、特定活動(6か月・週28時間以内の就労可)の資格に変更できました。
    • この特定活動資格を1年間、違反なく適正に保持していれば、特定活動(1年・就労可) への変更が認められる場合もありました。
今後の取り扱い
  • 原則、特定活動(6か月・週28時間以内の就労可) への変更が引き続き認められます。
    • この資格を1年間、違反なく保持している場合、特定活動(1年・就労可)への変更が認められる可能性があります。
    • ただし、技能実習を修了しておらず、なおかつ在留期間が残っている者については、特定活動への変更は認められません

参考

出入国在留管理庁ウェブサイトより(URL:https://www.moj.go.jp/isa/content/001349360.pdf)