ビザジャーナル
2025-07-24
「令和6年度 在留外国人に対する基礎調査」から見る──外国人材の“困りごと”と“日本で働き続けたい”意欲

出入国在留管理庁が令和6年度に実施した「在留外国人に対する基礎調査」は、18歳以上の中長期在留者および特別永住者の日本での生活・就労上の課題や意識を把握するものです。
ここでは、とくに「日常生活・行政手続き等での困りごと」と「日本で働き続けたい意欲」の主要ポイントを整理してみます。
多言語情報不足・相談窓口の不透明さがトップの「困りごと」
- 多言語情報の不足
公的機関が発信する手続き案内や制度説明が日本語のみのため、「必要な情報を自力で探せない」「重要な通知を見逃す」ケースが後を絶たないようです。 - 相談窓口の不透明さ
「どこに相談すればよいか分からない」「通訳・翻訳サービスの有無が事前に分からない」という声が多く、初動でのハードルが高いとの声があります。 - 行政手続きの複雑さ
在留資格更新や住民票・健康保険の手続きなど、申請書類の記入要件や必要書類の一覧が分かりにくく、「間違って再提出を求められる」「期限を過ぎてしまう」事例が散見されます。 - 日常生活サービスの利用困難
病院予約、銀行口座開設、子育て支援制度の利用など、「受付窓口で日本語の説明しかない」「必要書類や手続きフローが理解できない」といった課題も顕著です。
日本で働き続けたい意欲
- 圧倒的多数が「働き続けたい」と回答
「現在の在留資格が切れた後も日本で働きたい」と答えた外国人は約9割超にのぼり、高い定着意欲を示しています。
中でも「今後5年以上働きたい」とする割合も7割台前半と高水準を維持しています。 - 意欲の背景
- 安定した社会インフラ(公共交通・医療・教育)への信頼
- 日本企業での技術習得・キャリア形成機会
- 社会保障・福利厚生制度の充実
などが「就労継続の動機」として挙げられています。
- 働きたくないと答えた少数派の理由
- 「円安・物価高で割に合わない」
- 「給与水準が低い」
- 「母国で家族と暮らしたい」
といった経済・生活面の懸念が主な要因になっています 。
まとめと社内体制構築で重要なこと
次のような体制を整えることが、外国人の定着に繋がるのではないでしょうか。
- 情報アクセス支援:社内ポータルや紙資料での多言語案内を充実させ、公的機関情報の翻訳・要約を定期的にアップデートする。
- 相談体制の明確化:社内窓口(人事・総務)と社外専門家(行政書士)を組み合わせた「相談窓口」を設け、外国人社員が安心して利用できるよう周知する。
- 給与・生活補助の見直し:円安・物価高への対応策として、賃金水準・福利厚生で日本での長期就労を後押し。
- キャリア形成支援:技術研修やキャリア面談を定期的に実施し、「5年以上働きたい」という意欲を実現可能にするキャリアパスを提示。
「在留外国人に対する基礎調査」のデータは、彼らが何に困り、何を求めているかを示す貴重なエビデンスです。社内制度の見直しや支援体制の強化にあたっては、ぜひ本調査の結果を活用し、外国人社員の定着・活躍を支える施策を検討してください。