ビザジャーナル

2025-02-20

在留資格変更・在留期間更新ガイドライン改正のポイントと人事担当者が留意すべきこと


はじめに

2024年(令和6年)10月、出入国在留管理庁(以下、入管庁)の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」の一部が改正・公表されました。
今回の改正は主に健康保険証の取り扱いに関する点が大きく、企業の人事担当者の皆さまにとっても重要な内容となります。

本記事では、ガイドラインの概要と、今回の改正で特に注目すべき健康保険証に関する変更点、人事担当者が留意すべき事項を分かりやすくまとめました。

ガイドラインの概要

「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、外国人社員が日本国内で在留資格の変更・更新を行う際に、入管庁が判断材料として考慮するポイントを示したものです。
具体的には、以下のような要素を総合的に検討して許可・不許可が決定されます。

  1. 行おうとする活動が在留資格に該当すること
    • 申請者の予定している活動が、該当の在留資格に定められた活動内容や身分・地位に当てはまるかどうか。
  2. 上陸許可基準等を満たしていること
    • 申請者が「技術・人文知識・国際業務」や「技能実習」など、法務省令に定められた要件を満たしているか。
  3. 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
    • 現在の在留資格で本来許可されている活動を逸脱していないか(留学生の資格で就学していない、技能実習生の資格で実習以外の活動に専念している等)。
  4. 素行が不良でないこと
    • 日本国内の法令違反や懲罰歴がない、あるいは重大な社会的非難を受ける行為をしていないかなど。
  5. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
    • 生計が安定していて、公共の負担となっていないか、将来的に安定した生活を営む見込みがあるか。
  6. 雇用・労働条件が適正であること
    • 雇用される場合、労働基準法など労働関係法規を遵守しているか。アルバイトを含め、賃金・労働条件が適正かどうか。
  7. 納税義務等を履行していること
    • 所得税・住民税などの納税をきちんと行っているか。未納がある場合は不利に扱われることもある。
  8. 入管法に定める届出等の義務を履行していること
    • 在留カードに関する各種届出、所属機関変更の報告など、必要な手続きを怠っていないか。

改正のポイント:健康保険証の取り扱い

今回の改正でもっとも大きな注目点は、健康保険証に関する取り扱いの変更です。

何が変わるのか?
  • 在留資格の変更や更新の申請時においては、健康保険証の提示を求められる場合がありました。
  • しかし、2024年(令和6年)12月2日以降、健康保険証の発行が廃止される予定です。これに伴い、健康保険証の代わりに「資格情報の画面提示」「資格情報のお知らせ」または「資格確認書」などの提示が求められるようになります。
健康保険証を持っていない場合の扱い
  • 健康保険証が提示できないことで即座に不許可とはなりませんが、保険に加入している事実を確認できる書類等の提示を求められる場合があります。
    スマートフォン等でマイナポータルから「資格情報」画面を提示したり、自治体等から交付される「資格情報のお知らせ」あるいは「資格確認書」を用意するなど、適切な手段で加入を証明することが求められます。
企業・人事担当者が押さえておくべきポイント
  • 自社の外国人社員(あるいはその家族)が、健康保険証の廃止によってどのように保険加入を証明すればよいか、手続きを周知しておく必要があります。
  • 更新手続きのタイミングや会社で発行する在職証明書などの書類の準備に加え、マイナポータルの利用方法、資格確認書の取得方法などを社員に案内するとスムーズです。

人事担当者が留意すべきこと

外国人社員への周知とサポート
  • 保険加入確認
    どのように保険加入を証明するか、必要書類の取得方法を社内で案内してください。
  • 在留手続きの期限管理
    在留資格の更新や変更申請は期限が定められています。外国人社員がうっかり期限を過ぎてしまうことのないよう、人事部門でリマインドするなどのサポート体制を整えましょう。
  • 各種税・社会保険料の納付状況の確認
    納税義務の不履行は在留審査の不利な要素になり得ます。
    住民税・所得税などの支払い状況が滞りなく行われるよう、外国人社員への説明やサポートを適宜行うことが重要です。
労働条件の確認
  • 入管庁の審査では「雇用・労働条件が適正か」という点も確認されます。
    就業規則や雇用契約書、労働時間や賃金などが法律に則った内容になっているかを改めて点検しておく必要があります。
在留資格に応じた活動内容
  • 本来の活動と異なる業務に従事していないかの確認も必要です。活動内容が逸脱しないよう注意しましょう。
届出義務の把握と実施
  • 外国人社員が会社を退職したり、転職した場合、あるいは在留カードの記載事項が変わった場合など、入管法上の届出をする義務があります。本人任せにせず、人事部門として情報を早めにキャッチし、必要な届出方法を周知しましょう。

まとめ

令和6年12月2日以降は、保険証を提示できない場合に備え、「資格情報の画面提示」「資格情報のお知らせ」「資格確認書」などで証明する必要があります。

人事担当者としては、外国人社員がスムーズに在留資格の変更・更新を行えるよう、

  • 健康保険証に代わる手続きの周知
  • 在留手続きの期限管理
  • 適正な雇用管理と労働条件の確認
  • 税金・社会保険料納付状況のチェック
  • 届出義務の周知とサポート

などを総合的に行う体制づくりが求められます。社内規程や就業規則を再確認し、外国人社員に対してきめ細かいフォローを行いましょう。

【参考リンク】

改正されたガイドラインをしっかり理解したうえで、企業内での受け入れ体制を整備し、外国人社員の在留手続きをスムーズにサポートしていきましょう。