ビザジャーナル
2024-12-05
外国人社員の年金制度が変わる!?「脱退一時金」見直しを検討か?
日本に滞在する外国人労働者が増える中で、公的年金の「脱退一時金」制度が再び注目されています。
厚生労働省は現在、脱退一時金の受給条件や算定方法を見直す検討を進めています。
本記事では、脱退一時金制度の概要と現行の課題、さらに見直しの方向性について解説します。
脱退一時金とは?
脱退一時金は、日本の公的年金制度(国民年金や厚生年金)に加入していた外国人が、日本を離れて帰国する際に受け取れる制度です。
- 対象者
日本での年金加入期間が6か月以上あり、受給資格期間(10年)を満たさずに帰国する外国人。 - 請求条件
出国後2年以内に請求すること。 - 金額
加入期間や納付した保険料の額に基づいて算定。
この制度は、「受給資格期間を満たさないまま日本を出国する外国人が年金を受け取れない」という不公平を解消するために設けられました。
現行制度の問題点
現在の制度には、いくつかの課題があります。
1.再入国者の不利益
再入国許可を得て一時帰国する外国人も、脱退一時金を受け取ることが可能です。
しかし、一度受け取るとそれまでの保険料納付期間がリセットされるため、再び日本で働き始めても10年の受給資格期間に満たなくなる場合があります。なお、 2022年度には脱退一時金を受給した外国人の4人に1人が再入国許可を得ていたとのデータがあり、これは喫緊の課題となっています。
2.年金財政への影響
外国人労働者は日本の年金制度を支える重要な存在ですが、短期滞在者が増えることで、保険料納付が中断しやすくなっています。脱退一時金の支給が増えることで、年金財政の長期的な安定性が揺らぐ可能性があります。
3.払い損の懸念
受給資格期間を満たさない外国人にとって、年金保険料が「払い損」になるとの指摘もあります。
厚生労働省による見直しの可能性
厚生労働省はこれらの課題に対処するため、再入国許可を得て出国する場合の脱退一時金の請求条件を厳格化し、保険料納付期間のリセットを防ぐなど、脱退一時金の受給条件の変更を検討しているようです。
このような変更により、外国人が将来年金を受け取りやすくすることを目指しています。
企業人事担当者への影響と対応策
1.外国人社員への情報提供
外国人社員が帰国を決断する際には、脱退一時金制度の仕組みや、再入国した場合の影響を正しく説明することが重要です。
制度変更が正式決定した際には速やかに共有してください。
2.長期雇用のためのサポート
今回の見直しは、長期雇用を促進する方向で進められています。
外国人社員が安心して長く働けるよう、キャリア支援や福利厚生の強化を検討しましょう。
3.外国人雇用管理の見直し
人事部門として、年金手続きの管理を効率化するための仕組みを導入することも重要です。
特に、再入国時の手続きや年金加入状況の確認を円滑に行うことが大切です。
シンシアインターナショナルでは、社会保険労務士事務所(社会保険労務士事務所シンシアインターナショナル)において、外国人社員の雇用に伴う社会保険加入・給与設計に関するコンサルティング、厚生(国民)年金脱退一時金還付請求、および外国人雇用に関する顧問、コンサルティング業務をご提供しています。
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