ビザジャーナル

2024-06-20

会社が外国人従業者のパスポートを一括管理することはNGなのでしょうか?


Q:外国人のパスポートの有効期限の管理等も兼ねて、外国人従業者のパスポートを一括管理しています。このような取り扱いはNGなのでしょうか?

A:会社が外国人従業員のパスポートを一括管理することはできません。

まず、大原則として、入管法第23条第1項には「本邦に在留する外国人は、常に旅券(次の各号に掲げる者にあつては、当該各号に定める文書。第三項及び第七十六条第二号において同じ。)を携帯していなければならない。」旨が規定されています。つまり、日本に滞在する外国人には、パスポートの携帯義務が課されます。
ただし、同項の但し書きでは、「ただし、次項の規定により在留カードを携帯する場合は、この限りでない。」との定めがあるため、在留カードを携帯する場合には、パスポートの携帯義務は課されないことになります。

しかし、厚労省が公表している「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」内には、以下の定めが存在します。
6 金品の返還等
事業主は、外国人労働者の旅券等を保管しないようにすること。また、外国人労働者が退職する際には、労働基準法の定めるところにより当該外国人労働者の権利に属する金品を返還すること。また、返還の請求から七日以内に外国人労働者が出国する場合には、出国前に返還すること。

上記指針は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の第八条の規定に基づき定められたものですが、罰則規定はありません。しかし、罰則規定がないからと言って無視してもよい、というものでは決してありませんし、後々の従業員とのトラブルの火種ともなり得ます。

また、2024年5月24日付けで、「外国人従業者のパスポートを管理する契約は、公序良俗に違反し無効である」との判決が、横浜地裁にて下されました。また、使用者には、再発行手数料と慰謝料の合計金額22万6,000円の支払いが命じられています。

優秀な外国人材を確保し、また、長くかつ気持ちよく働いてもらうためにも、法令遵守を徹底しましょう。